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作者: モンブラン博士 (総ページ数: 82ページ)
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*39*
「『ジャドウ=ドライバー』!」
私はジャドウの必殺技を食らう瞬間、今までの経験から急所をたくみにはずし、技の威力を軽減させることに成功した。
だが、さすがはジャドウの必殺技だけのことはある。
立ち上がるのに時間を要してしまった。
「フフフフ、カイザーよ。満身創痍ではないか?それでもまだ、この俺と戦うか?」
「言ったはずだ、ジャドウ。私は腕がもがれようが、足が砕けようがキミに屈服するわけにはいかない!」
「今の台詞はこの試合初めてだな」
ジャドウは私の言葉を冷静に分析して含み笑いをしながら口を開く。
言われてみて気がついたのが、なんだかそんな気がしなくもない。
「確かにキミの言うとおりだな、ジャドウ。だが、この台詞は言ったはずだ。
これはあくまで私とキミ、どちらが強いか比べあうための真剣勝負にすぎないと」
「カイザーよ、お前はそうまでして俺と決着をつけたいのか。正義と悪、このふたつが協力すれば超次元を超えるかもしれんのだが・・・・・」
ジャドウはいつもの含み笑いをしながらいたずらっぽく目を細める。
その意味深な言葉に一瞬嫌な予感を覚える。
「ジャドウ。まさか・・・お前が我々を裏切った真の目的は・・・・・・!」
すると彼はニヤリと笑い、
「そういうことだ。フフフフ・・・・・だが、それを知ったところで今からどうにかできるかな?お前たちのようなオチこぼれチームよりは我々が奴らと対決したほうがいい。最も、我々の中に奴らのチームの者がひとり潜んでいるがな・・・」
彼の驚愕の発言に私は思わずハッとして集中力が欠け、その隙にフライングキックを食らってしまった。
「少々おしゃべりがすぎてしまったようだ。そろそろこの闘いも終わらせるとするか」
彼はそういうと、私にベジュラム=バックブリーカーをかけ、肩膝で私の背骨をこれでもかというほど散々痛めつけ、極め付けにコーナーポストの最上段に上った。
私は仰向けに倒れており、もはや立ち上がる気力さえなかった。
それほど私の体力は消耗しているのだろう・・・やはり年齢を無視して動き回りすぎたな・・・・
「フフフフフ、やはり止めはこの技でないとな・・・・」
トップロープから飛び上がり、ニードロップで落下してくるジャドウ。
その光景に観客は息を飲み、声を上げる。
ジャドウは数多くの必殺技を持つことで有名だが、その中で最も有名なのがこのジャンピングニードロップだろう。
かつて対戦したあるレスラーの右耳をそぎ落とし自殺に追い込み、それ以降も数知れないレスラーの首の骨や顔面の骨を砕き、病院送りにした、プロレス界ではあまりに有名な奴の必殺技だ。
「世界一のニードロップの威力、とくと味わうがいい、カイザーよ!」
その瞬間、私は時間が圧縮されたような感じを受けた。
所謂走馬灯というものであろうか、今まで生きてきた中での数々の思い出が脳裏に蘇ってくる。
スター=レスリングジムでの仲間と過ごした日々、末弟ハニーの笑顔・・・
それらが頭を掠めたその刹那、目の前が真っ暗になった。