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作者: モンブラン博士 (総ページ数: 82ページ)
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*5*
先ほどの部屋を通り抜けると、今度は本格的なトレーニング室が現れた。
と、ここで、サンドバックに蹴りを打ち込んでいた、オレンジ色の三つ編みに赤の中国服を着た中性的な外見のこどもが声をかけた。
「見たところによると、あなたは新入りですね。まあ、中国四千年のカンフー使いである僕、王李の実力には到底及ばないとは思いますが、せいぜいがんばってくださいね」
な、なんだコイツ、目茶苦茶頭に来る!
「ちなみに僕は男ですので、好きにならないでくださいね。もし告白なんかしたらそのときは・・・・」
王李はそこまで言って、サンドバックに正拳突きをお見舞いした。
ドゴォン!
サンドバックの中央に風穴が開き、クッションがあたり一面に飛び散る。
「このサンドバックがあなた。飛び散ったのはあなたの血です」
コイツすげぇ強い!ヤバイ!まともに関わったら絶対殺される!!
王李は俺を一瞥した後、部屋を出て行ってしまった。
ここからの案内は星野が引き受けるというので、不動は不敵に微笑むとどこかに行ってしまった。
まあ、あんまり関わりたくない奴だったし、どこかに行ってくれて助かると言えば、助かる。
「では、ビルの見学を再開しましょう。ついて来てください」
無機質、無表情な顔と声で星野が言う。俺は置いていかれては困るのでついていくことにした。
エレベータにのり2階へと上がる。
ドアが開いて現れた光景に絶句してしまった。
広々として開放的な部屋は壁や床が大理石で出来ており、白く光り輝いている。
天井にはキラキラ光る豪華なシャンデリアがあり、優しい光が部屋全体を覆っている。
イスはいかにもすわり心地がよさそうな高級ソファ。
つまり金に糸目をつけず、部屋の隅々までとことん贅沢に作られた部屋なのだ。
「気に入りましたか?ここは通称『貴族の間』と呼ばれている場所です。会長がお気に入りの場所でここでよく僕たちは音楽の練習をしています」
星野が指差す先をみると、数人の子供がピアノやらバイオリンやらを演奏している。
何の曲かはわからないが、穏やかな音色でいろいろとツッコミが多かった俺の心を癒してくれる。
すると首までかかる金髪に白い肌、切れ長の翡翠色の瞳を持ち、赤のチョッキを着て、白手袋をはめた美少女が近づいて来た。
ここ、北欧系の外人の子供の割合が多くないか?
「あら、星野くん。えっと・・・こちらの方は?」
「この人は井吹さん。不動先輩が連れてきた新しいメンバーです」
勝手に入会したことになっているようだが、俺はここに入るなんて一言も言った覚えはないのだが・・・と内心ツッコミをいれていると、
彼女は優雅なお辞儀で一礼をして、
「初めまして。私はメープル=クラシックといいます。よろしくお願いします」
あまりにも礼儀正しいのでこちらが面食らってしまった。
それにしても、今まで俺が見てきた女子とは可愛さがケタ違いだな。こんな可愛い子がいるならここに毎日通ってもいいかもな。
すると隣にいた星野が小声で俺に囁いた。
(メープルさんは僕かラグくんのものと相場が決まっているんです。残念ですが、諦めてください)
相場が決まっているのかよ・・・・
(ラグ?)
(はい。メープルさん専属の執事的存在の男の子です)
(執事までいるのかよ。どういう場所なんだここは!?)
(ビルの前にある大きな看板を見ていなかったのですか。ここはレスリングジムです)
(・・・・・・・)
ありえねぇ。