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作者: モンブラン博士 (総ページ数: 82ページ)
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*59*
僕は第1試合のリングへ上がる。
対戦相手はカイザーさんの遠戚のエジプタス=ブレットさん。
そういえば、パンの発祥地はエジプトだった気がする。
「ファラファラ。この余がお前ごときに負けるとでも思っているのか。エジプトの秘術でたっぷりと痛めつけてくれる!」
彼は僕に突進し、ショルダータックルを放つ。
僕は素早く体をひねって避ける。相手がよろめいた隙に後ろを取ってジャーマンで投げる。
「シーを倒したというその実力はどうやら本物のようだな。だが、余がそれぐらいの技で倒されると思ったら、大間違いだ。秘儀『包帯縛り』!」
すると彼の全身に巻き付けられた包帯がほどけ、それらが僕に迫ってきたかと思うと、足に巻き付き自由を奪う。
エジプタスさんは腕の包帯を鞭のようにしならせ、僕を上空へ放り投げ、何度も何度もリングへ叩き付ける。
「ファラファラ。余の秘術はまだまだあるのだ。これぐらいでくたばってもらっては困る」
彼は僕の足から包帯をはずすと、今度はキャメルクラッチで背骨を痛めつける。僕は必死で抵抗し技から逃れ立ち上がる。
僕たちふたりはじっと相手を睨む。
この試合が開始され初めての膠着状態となった。
と、不意に骸骨のように痩せこけ、無表情の怒雷氷(ドライアイス)さんが口を開いた。
「エジプタス。彼の探偵帽を奪い、渡したまえ」
その瞬間、サーッと全身の血が引くほどの恐怖を覚えた。
僕は大事な秘密が隠されてある帽子を奪わせないと頭を守る。
けれどその努力は空しく、羽交い絞めにされ、敵に帽子を奪われてしまった。
あの帽子がないと、僕は僕でなくなる!
無我夢中で羽交い絞めにされている腕をほどき、帽子を取ろうと接近する。
だが、帽子はコロコロと転がり、怒雷氷さんの手の中へ。
その刹那、案の定僕の体に変化が起こり始める。
体が柔らかくなっていく感覚を覚え、胸にふたつのふくらみが現れる。
それに気が付いた瞬間、僕の体はもうひとりのボクに奪われた。
「ハア……ハア……ハア……」
ボクの体はあきらかに疲労困憊していた。
ヨハネスのアニキが前の試合で無茶するからだ。
これはアニキの体でもあり、同時にこのボクの体でもある。
アニキが無理をするとボクが困る。
ボクは心の中でバカアニキに叱る。
アニキ、ボクの体で、あまり無理しないで!
(ごめん、フローラ…僕のせいで……ごめん)
もういいよ、アニキ!
この試合、かなり不利かもしれないけど、ボクは諦めない!
動けないアニキの分まで、ボクは負けない!
ボクは手刀を振るい敵に向かっていく。
「ここからはボクが相手だ!!」