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作者: モンブラン博士 (総ページ数: 82ページ)
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*65*
「次の対戦相手は誰ですか?ニャハニャハ」
リング上のトミーがニヤリと笑みを浮かべる。
本来なら俺がコイツを真っ先に倒してやりたいんだが、試合の順番がそうさせてくれない。
ところで、次の対戦相手は…
「僕だよー!トミー兄さん、ヨハネスくんにいじわるしちゃだーめ!僕がお仕置きするもん!」
ハニーだった。
正直、最悪中の最悪だ。
ハニーとトミーは文字通り大人と子供、というか保育園児との対決である。
誰がどう見てもハニーの敗北するのは目に見えている。
だが、カイザーさんは達観したような表情で告げた。
「ハニー、トミー兄さんに痛い痛いしてあげなさい」
「うん。だけど、その前におんぶからでいいかなー?」
ハニーはえへへと笑いながら甘ったるい声で尋ねる。
おんぶ。痛い痛い。これが何を指すのか俺にはさっぱりわからない。
そうこうしているうちにハニーは兄に肩車されて、リングへ入っていった。
客席からは笑い声が響く。
「あの坊やは戦うつもりなのか?冗談だろ」
「あんな子供がトミーの相手になるかよ」
その声にまるで俺までバカにされているような屈辱を覚える。
なんだってカイザーさんは、ハニーなんかをチームメンバーとして選出したんだ?
自分の弟だからだろうか。
俺はあれこれと想像するが、まるでわからない。
試合開始を告げるゴングが鳴らされる。
「行くよ、トミー兄さん!」
ヒュン、バキッ!
「ニャハギャアアアア!」
俺は自分の目を疑った。
さっきまで甘えん坊だったハニーが信じられないほどの速さで打撃技を次々に、しかも確実にクリーンヒットさせている。
「トミー兄さん、おんぶー!」
ハニーはトミーの背中に飛び乗ったかと思うと、チョークスリーパーで頸動脈を締め上げる。
「今度は高い高いだよー?」
今度はなんとあの小さな体からどこにそんな怪力があるのかと思うほどに、軽々とトミーの体をリフトアップ。
そのままボディスラムで叩き付ける。
立ち上がってきたところをドロップキックで首を攻撃し、ヒン曲げ、相手の感覚が鈍ったところで高角度からのニードロップをお見舞いする。
な、なんなんだ……
なんなんだ……この試合は!?
あのヨハネスを圧倒したトミーが、赤ん坊扱いされている。
俺は夢を見ているのか?
「トミー兄さん、だっこー!」
ハニーは笑顔でぴょんと兄に抱き付く。
「骨が……骨が折れるう……」
トミーの顔が苦痛に歪む。
彼は兄にベアハッグを決めていた。
彼のバカ力がトミーの全身の骨を締め上げる。
「お兄さん、つらかったよね。ごめんねー、あの時、ぼくたち力になれなくて……」
ハニーの甘ったるい声が少し涙声になる。
見るとハニーはその大きな緑色の瞳に涙をいっぱいためて号泣していた。
コイツには、兄への攻撃をやめる優しさはないのか!?
彼は目を小さな手でゴシゴシと擦り涙を拭く。
「試合が終わったら、いい子いい子してあげるから許してね」
いうが早いが彼はトミーを上空高く蹴り上げた。
そのまま抵抗できずに落下し、リングへめり込んだトミーを引き抜き立たせると、鉄柱めがけてバックドロップを炸裂させた。
鈍い音がしてトミーは鉄柱に串刺しになった後、ゆっくりと落下。
そのまま地面に倒れ、起き上がることはなかった。
「痛い痛いおーわり。じゃあ、カイザー兄さん、僕、帰るねー!」
カイザーさんは帰ろうとするハニーを慌てて引き止める。
「待ちなさい。試合は最後まで観戦しなさい」
「はーい」
彼は足をブラブラさせながら、リングサイドの席に腰かける。
呆気にとられ口をポカンと開ける俺をカイザーさんは少しいたずらっぽく微笑みいった。
「どうやら、外見に惑わされなという教訓を、私の弟はキミに与えたようだな」
いや、それ以上に恐怖を与えられたよ!