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作者: モンブラン博士 (総ページ数: 82ページ)
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*64*
突如、ヨハネスの胸にふたつのふくらみが出現した。
俺は錯覚かと思ったが、どうやらそうではないらしい。
あいつは女だったのか?
いや、違う。
帽子を脱がされた瞬間に彼は女になったのだ。
すると彼はあの帽子を被ることで性別や性格を変えることができるというのか!?
そんなことを考えているうちに、いつものヨハネスとは違う、積極的かつ残虐なファイトでミイラ男を倒してしまった。
俺が呆気にとられている間に、2回戦目はスタートした。
最初は優勢に試合を進めていたヨハネス(?)だが、次第に敵が本気を出してくるようになり、劣勢に追い込まれ、今現在、彼(彼女?)にロメロスペシャルが炸裂されていた。
すると服が破け、ふたつのふくらみが露わになった。
俺は鼻血が出そうになるのを必死で押さえ、女になったチームメイトに声援を送る。
だが、俺は応援しているうちに胸のふくらみなどどうでもよくなっていった。
ヨハネス(?)は、その華奢な全身の関節が悲鳴を上げ、腕や足の筋肉が断裂しているにも関わらず、ギブアップをしない。
必死で痛みを堪え、技に耐え続けている。
その姿を見ているだけで、何も手助けできない自分が嫌になってくる。
するとヨハネスは死を覚悟したかのように「死にざまを見てほしい」と言った。
次の瞬間、血がヨハネスの口から吐き出され、彼は失神負けをしてしまった。
トミーが技を解くと、彼はゴロゴロとリングを転がる。
地面に衝突する寸前に彼の体を星野が抱きかかえた。
「ボク……負けたんだね……」
息もたえだえに彼は口を開く。
すぐに医療班がかけつけ、彼を担架に乗せる。
「みんな、力になれなくてごめんね……」
「何を言うんだ。お前はよく戦ったよ!」
俺は思ったことを口にし、彼の手を握る。
「カイザー……隊長……ひ、ひとつだけ……教えて…」
カイザーさんはぐっと身をかがめ、ヨハネスに顔を近づける。
「どうして、ボクを選んだの?ジムにはボクより優秀な人たちがいっぱいいるのに……どうして……」
彼は優しい微笑みを浮かべ、彼の手を握る。
「ゲルマン魂だよ!キミはジムの中で一番の負けず嫌いだ。
どんな技をかけられても、決してギブアップだけはしたことがなかった!
そのガッツ、最後まで勝負を諦めないネバーギブアップの精神、心の強さ、キミのゲルマン魂の素晴らしさを、他のメンバーに教えてやりたかったのさ」
「……ありがとう……隊長……ボク、あなたの役に立ててよかった…」
彼は穏やかな顔で弱々しく笑った。
カイザーさんはぐっと握る手に力を込めて、
「私も、キミを選んで本当によかったよ、ヨハネスくん。
あとは我々に任せろ。必ずキミの病室に勝利を届ける!!」
ヨハネスはその言葉に一粒の涙を流し、病院へと運ばれていった。