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作者: モンブラン博士 (総ページ数: 82ページ)
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*69*
俺は怒雷氷に突進していき、フライングクロスチョップを放つ。
さっき、ヨハネスがやっていたのを見様見真似でやってみたが、意外とうまく命中した。
攻撃をモロに食らった彼はわずかだが後退する。
この一撃で俺は自信を持った。
敵もダメージを負う。決して攻撃がきかないわけではない!
俺は次にドロップキックを甲板に当てる。
だが、この程度では敵はよろめきこそすれ、倒れない。
「フハハハハハ……そのような攻撃で私を倒せると思ったかな」
彼は俺の頭を掴み、軽々と自分の頭のところまで持ち上げる。
両足で蹴りを放とうとするが、俺の足は空中をバタバタかくだけだった。
「やはり体格差が不利になったようだな」
彼はココパットを見舞い、俺を倒すと、倒れている俺を滅多蹴りにする。
1撃でもかなりの威力を持つ蹴りを何度も食らったため、だんだん意識が遠くなっていく感覚を覚える。
このまま、無様に負けて終わりか?
ヨハネスの帽子も取り返せず、仲間の期待にもこたえられず……?
バカを言うな、俺はこの骸骨みてぇなじいさんに絶対に勝って、リングサイドにいる天童を見返してやる!!
俺は何発目かの蹴りを掴むと同時に体をゆっくりと起こし始める。
足を掴まれバランスを崩した敵は大きくよろめき、この試合初めてのダウンをした。だが、奴はすぐに立ち上がり、なんとドロップキックを放った。
俺の蹴りとは比べ物にならないそれを食らい、俺は倒れこむ。
だが、なんとか立ち上がろうと奮起する。
ここで負けたら、男が廃る!
「うおおおおおおおおおおおお!」
俺は咆哮を上げ、パンチを見舞う。
「まるで蚊のとまったように軽いパンチだ。
井吹宗一郎、パンチというものは、こうやって打つのだ」
荘厳な声と共に素早いパンチが飛んでくる。
と、その刹那、天童が叫んだ。
「井吹、パンチをサッカーボールだと思い込め!」
パンチをボールに……俺の脳裏に白黒模様のボールが思い浮かぶ。
それがまっすぐ俺に向かってくるのだ。
ここで取るべき行動はひとつしかない!
「止めてやる!」
俺は両手でパンチをしっかりと掴み、衝撃を受け止めようとする。
敵のパンチの威力にじりじりと後退していくが、なんとか根性で止めることができた。
「偶然は二度起きぬ!」
彼は再びパンチを放ってくるが、今度は以前軽井沢と戦ったときに奴が見せたフットワークで次々に避け続ける。
「バ……バカな」
彼は予想外のことに思わず冷や汗をかく。
だが、顔は無表情であせりの色を感じさせていない。
俺は卍固めを奴にかけ、ギブアップを奪いに行く。
技は完璧に決まり、敵を倒せるかと思ったそのとき、和人が言った。
「技を解いて、井吹くん。彼にジャイアントスィングをかけるんだ」
俺は怪訝に思いながらもしぶしぶ技を解き、ジャイアントスィングに持っていく。
すると驚くべきことが判明した。それは敵の軽さだ。
身長の割にとても軽い。
まあ、外見が骨と皮だけなのだから軽いのは予想していたが、少なくとも俺よりは重いはずと踏んでいたのに、それをあの和人は見抜きやがった。
相変わらず、奇想天外な作戦を思いつくことに関しては天下一品だぜ。
「今度は僕の番です」
和人の隣にいた一郎がつぶやき、眼鏡のズレを指で直す。
「そのままの姿勢で彼をコーナーポストへ2度、叩き付けてください」
俺は言われた通りに叩き付ける。
すると敵がはじめてうめき声をあげた。
だが、彼はここで参るほどヤワではない。
口からドライアイスを吐いて俺の視界を奪うと技から脱出し、仁王のように立ち上がる。
「仲間との共同作戦、なかなかのものであったが、勝負ありだ」
彼の全身から威圧感と闇のオーラが溢れ出ているのを感じる。
クソッ、このまま負けちまうのかよ!
そのとき、リングに黒い影が舞い降りた。
現れたのは、肩につく白に近い金髪、青い瞳、巨乳の女性だった。
「あんたの相手はこの坊やじゃない。この私、イル=ブランだ。私の前に跪けェ!!」