完結小説図書館

<< 小説一覧に戻る

奇想天外!プロレス物語【完結!】
作者: モンブラン博士  (総ページ数: 82ページ)
関連タグ:
 >>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック

10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~ 80~

*69*

俺は怒雷氷に突進していき、フライングクロスチョップを放つ。

さっき、ヨハネスがやっていたのを見様見真似でやってみたが、意外とうまく命中した。

攻撃をモロに食らった彼はわずかだが後退する。

この一撃で俺は自信を持った。

敵もダメージを負う。決して攻撃がきかないわけではない!

俺は次にドロップキックを甲板に当てる。

だが、この程度では敵はよろめきこそすれ、倒れない。

「フハハハハハ……そのような攻撃で私を倒せると思ったかな」

彼は俺の頭を掴み、軽々と自分の頭のところまで持ち上げる。

両足で蹴りを放とうとするが、俺の足は空中をバタバタかくだけだった。

「やはり体格差が不利になったようだな」

彼はココパットを見舞い、俺を倒すと、倒れている俺を滅多蹴りにする。

1撃でもかなりの威力を持つ蹴りを何度も食らったため、だんだん意識が遠くなっていく感覚を覚える。

このまま、無様に負けて終わりか?

ヨハネスの帽子も取り返せず、仲間の期待にもこたえられず……?

バカを言うな、俺はこの骸骨みてぇなじいさんに絶対に勝って、リングサイドにいる天童を見返してやる!!

俺は何発目かの蹴りを掴むと同時に体をゆっくりと起こし始める。

足を掴まれバランスを崩した敵は大きくよろめき、この試合初めてのダウンをした。だが、奴はすぐに立ち上がり、なんとドロップキックを放った。

俺の蹴りとは比べ物にならないそれを食らい、俺は倒れこむ。

だが、なんとか立ち上がろうと奮起する。

ここで負けたら、男が廃る!

「うおおおおおおおおおおおお!」

俺は咆哮を上げ、パンチを見舞う。

「まるで蚊のとまったように軽いパンチだ。
井吹宗一郎、パンチというものは、こうやって打つのだ」

荘厳な声と共に素早いパンチが飛んでくる。

と、その刹那、天童が叫んだ。

「井吹、パンチをサッカーボールだと思い込め!」

パンチをボールに……俺の脳裏に白黒模様のボールが思い浮かぶ。

それがまっすぐ俺に向かってくるのだ。

ここで取るべき行動はひとつしかない!

「止めてやる!」

俺は両手でパンチをしっかりと掴み、衝撃を受け止めようとする。

敵のパンチの威力にじりじりと後退していくが、なんとか根性で止めることができた。

「偶然は二度起きぬ!」

彼は再びパンチを放ってくるが、今度は以前軽井沢と戦ったときに奴が見せたフットワークで次々に避け続ける。

「バ……バカな」

彼は予想外のことに思わず冷や汗をかく。

だが、顔は無表情であせりの色を感じさせていない。

俺は卍固めを奴にかけ、ギブアップを奪いに行く。

技は完璧に決まり、敵を倒せるかと思ったそのとき、和人が言った。

「技を解いて、井吹くん。彼にジャイアントスィングをかけるんだ」

俺は怪訝に思いながらもしぶしぶ技を解き、ジャイアントスィングに持っていく。

すると驚くべきことが判明した。それは敵の軽さだ。

身長の割にとても軽い。

まあ、外見が骨と皮だけなのだから軽いのは予想していたが、少なくとも俺よりは重いはずと踏んでいたのに、それをあの和人は見抜きやがった。

相変わらず、奇想天外な作戦を思いつくことに関しては天下一品だぜ。

「今度は僕の番です」

和人の隣にいた一郎がつぶやき、眼鏡のズレを指で直す。

「そのままの姿勢で彼をコーナーポストへ2度、叩き付けてください」

俺は言われた通りに叩き付ける。

すると敵がはじめてうめき声をあげた。

だが、彼はここで参るほどヤワではない。

口からドライアイスを吐いて俺の視界を奪うと技から脱出し、仁王のように立ち上がる。

「仲間との共同作戦、なかなかのものであったが、勝負ありだ」

彼の全身から威圧感と闇のオーラが溢れ出ているのを感じる。

クソッ、このまま負けちまうのかよ!

そのとき、リングに黒い影が舞い降りた。

現れたのは、肩につく白に近い金髪、青い瞳、巨乳の女性だった。

「あんたの相手はこの坊やじゃない。この私、イル=ブランだ。私の前に跪けェ!!」

68 < 69 > 70