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作者: モンブラン博士 (総ページ数: 82ページ)
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*77*
私は次の対戦相手を睨む。
次はブレッドファミリーで最強にしてわが父、グランド=ブレッドだ。
彼はとうとうその重い腰を上げた。
彼の姿にはさすがの星野くんも驚いている。
なにしろ、彼は本物そっくり白馬の覆面を被っているのだから、仕方がない。
星野くんは彼に勇気を振り絞り立ち向かっていくが、まったく歯が立たない。
彼はことごとく星野くんの攻撃をあしらい、封じ込め、完膚なきまでに痛めつける。その光景はさながら地獄絵図だ。
星野くんの実力ならば、1〜4人目までは恐らく楽勝できたであろう。
それほど私は彼の実力を認めている。
もし、私に何かあったら、次の副会長には彼を推薦すると遺言状に書いていてよかった。
彼はまだ子供だが、その優しさ、強さ、向上心、知性、ともに申し分ない。彼ならば他のみんなもきっと賛成してくれるだろう。
そして、これで私も迷いはなく、心安らかに死ぬことができる。
もっとも、わが弟ハニーと別れるのは寂しいが、いつか天国で会えるだろう。
今はこの世界のために、わが父を倒すことが先決だ。
己の命を捨てたとしても、奴だけは倒さねばならない。
この美しい惑星のためにも。
私は星野くんに向かって言った。
「星野くん、身勝手な私を許せ!」
彼はまだ戦える余力をわずかだが残している。
本来の勝負ならば、私は赤のタオルを投げ込むような真似は決してしない。
どんなにだめだと思っても、その人物のもつ最後の力に賭けてみる。
だが、今回だけは唯一の例外だ。
このままでは、未来ある大切な命をあの怪物に奪われてしまう!
だが、あの化け物は私の投げ込んだタオルを掴み、引きちぎり、投げ捨ててしまった。
「もうしゃべるな、このブレッド家の恥さらしが」
奴はこの世界大会が始まって以来初めて口を開き、ボソリと私の方を向いてつぶやくと、星野くんの服の襟首を掴んで彼を持ち上げ、
「さて、愚かなる天使の少年、死する前に思い残すことはあるか?」
星野くんはボロ雑巾のようになりながら、息もたえだえに答えた。
「せめて、最後ぐらいは、天使の力を取り戻して戦いたかったですね……」
「それでは最後に何か言い残すことは?」
すると、彼は私の方を見て尋ねた。
「・・・・カイザーさん、どうしてあなたはこの僕を選んだのですか・・・・?
僕よりも不動先輩やジャドウさんを選んだほうがよかったのに……」
私は息を思い切り吸い込み答えた。
「そんなことはない!私はキミを選んで正解だと思っている!
事実、キミはこの大会が始まって以来、大切な局面で我々に勝利をもたらし、希望の光を与えてくれた。
不動やジャドウにはできなかったと私は思っている!
そして、私がキミを選んだ最大の理由、それはキミの魅力にある!」
「長い。言い終わる前に、止めを刺してやる」
その刹那、あの怪物は彼をアルゼンチン=バックブリーカーに捕え、力をかけ始める。
彼の口から血が噴き出し始める。
「キミの1番の魅力は、愛するものを全力を尽くして守ろうとするその優しさだーッ!」
そのとき、井吹くんの持っていた帽子がひとりでに動き、星野くんの頭に被さった。
すると、彼の背中から美しく大きな白い天使の翼が現れた。
「やっと僕の本来の天使の力が出せるようです。カイザーさん、厚かましいでしょうが、もう少しだけ戦わせてください!」