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作者: モンブラン博士 (総ページ数: 82ページ)
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*8*
俺たちはメープルと別れた後、3階へ向かった。
「井吹さん、ここからは地獄です。十分気を引き締めてくださいね」
「ああ」
俺は返事をしたものの、返す言葉がない。
天使である星野がいうほどの地獄絵図とはどんなものなのか、恐怖の反面、興味がわいてきた。
3階のドアが開くと、そこに待ち受けていたのは文字通りの地獄絵図の光景だった。
室内はどんよりと暗く、壁や床など様々なところにトラップが仕掛けられており、星野の案内がなければ、俺は死んでいただろう。
しばらく歩くと、明かりが見えてきた。ようやくこの地獄から抜け出すことができる。
俺が安堵のため息をついたその刹那、どこからともなく数枚のトランプが飛んできた。
生まれ持った反射神経でそれを避ける。トランプは壁にサクサクと突き刺さっていった。
「なかなかの反射神経、天晴れだ・・・・フフフフフ・・・・」
声がしたかと思うと、白い人影が俺たちの前に立ちはだかった。
よく見るとそれはギラギラと鋭い殺気を放った白い軍服の男。
「・・・・久しぶりだな、星野天使」
「ジャドウさん。すみませんが、ここを通してくれませんか?」
「断る。どうしても通りたいのなら俺を倒していくんだな」
ジャドウとかいう男は腰にある鞘からサーベルを引き抜き、その切っ先を俺たちに向ける。
「さて、どうするかな?フフフフ・・・・」
ドスのきいた声で不敵に笑うジャドウ。
これが星野の言っていた地獄の正体なのか・・・・!
相手が武器を持っていることもそうだが、強そうな外見要素から考えて、まったく勝算がない。
畜生、ここで八つ裂きにされておしまいかよ・・・・!
「誰でもいい!正義の味方、俺たちを助けてくれ!!」
俺はやぶれかぶれになり、叫んだ。
するとどこからともなく、馬の蹄の音が聞こえてきた。
音はだんだんと大きくなっていき、それと同時にテンションの高い声も聞こえてきた。
「イーハー!正義の味方、ロディ参上!!」
暴れ馬に乗って周囲のトラップをブチ壊しながら現れたのは、西部劇などに登場しそうな保安官の格好をした男だ。
「ジャドウ、悪いがお前の好きにはさせねぇぜ!この坊主は俺が守り通す!!」
言うがはやいがロディと名乗る男は強引に俺と星野の服を掴み、暴れ馬に乗せ、暴走車のように凄まじい速さで走らせ始めた。
3人乗りして大丈夫なのかと思いつつ、振り落とされてはかなわないと必死でロディの腰のあたりを掴む。
「どけどけどけどけどけどけ〜ッ!
俺と俺の暴れ馬は誰にも止められないぜ〜ッ!!イーハー!!」
このロディという男、半端ないハイテンションで次々に窓を蹴破り、扉を蹴破り、『地獄の間』を突破していく。
こんな奴が街中で暴走したら絶対ヤバイ!
「あの・・・ロディ・・・・さん?」
「あ?俺のことはロディでいいぜ坊主!!やっぱ最高だぜ、両手離し乗りはよ!!」
今始めて気がついたのだが、コイツはこの無茶苦茶に暴れまわる馬を手綱を握らずに器用に乗りこなしている。
どんな乗馬訓練をすればこんな馬に乗りこなす事ができるんだ!?
「さあ、お前らも俺と一緒に叫ぼうぜ、イーハー!!」
「「・・・・・・」」
「なんだよ、ノリが悪いな〜。こういうのは思いっきり楽しむのがなん
ぼだろ?」
いや、楽しむとかそういう次元超えてるから。
俺は吐き気を必死で堪えつつ、この地獄から早く解放されることを望んだ。
「さあ、もっともっとスピード全開でいくぜ!!」
やめろ、やめてくれ!
「イヤッホー!!」
俺のやめての声はこの暴走保安官の声にかき消され、届きはしなかった。
「ところで、お前ら、どこに向かってんだ?」
「・・・・・会長のいる15階・・・・」
かつてないほどの揺れを体感した俺の体はもう限界だった。
「そうかぁ!なら始めからそう言えよ!」
「言う暇がなかったんだ!」
「ナンセンス!そんなことフロンティァ精神を持つ俺が考えると思うか?アメリカ人はな、どこまでも自由で人生を楽しむんだ!!」
・・・・いや、俺、日本人だから。