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作者: モンブラン博士 (総ページ数: 198ページ)
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*143*
「次はなんの曲にしますか?」
「『恋人たちのクリスマス』」
その返事を聞いた俺は、驚愕し、星野が入れようとしていたCDを慌ててひったくる。
「不動さん、何するんですか!」
「この曲だけはダメだ」
「どうして?」
星野は理解できないと言った風に首を傾げる。
まったく、これだからガキは困る。
「この曲は冬用だ。もっとも、会長は年中聞いているが…星野、お前は会長のクリスマス好きをどれほどのものか知っているのか?」
「…そういえば…去年のクリスマスで…会長がこの曲をかけ、踊りだしましたね」
「それで、俺たちは18時間、ぶっつ続けでダンスの相手をさせられ、自分たちの力のなさを知った…」
「まあ、なんでもいいからかけなさい」
会長が明るい声で言ったので、俺の作ったせっかくのシリアスのムードが壊れ、星野はコントロールされるかのようにCDを入れ、スイッチを押した。
イントロが流れ、ゆらりと、まるで陽炎のように会長の体が動いた、そのときだった。
「きゃあああああっ!」
縦横無尽にリングを駆け巡る、会長の神技が炸裂し始めたのだ。
まずは、『流星の舞』。
これは軽井沢のガキが使う『白兎の舞』の原型とも言える技で、その威力は1発で1流レスラーをKОにしたこともあるほど、強力なものだ。
次に必殺のパイルドライバーを炸裂させた。
会長のパイルドライバーは他のレスラーがかけるのとは高度や威力などが桁違いに高い。
だが、敵はフラフラになりながらも立ち上がってきた。
なんという精神力、執念、タフネス!
「バックブリーカー!」
「……ゲホッ…」
会長の得意技であるバックブリーカーで、ついに敵は倒れた。
お…恐ろしい奴だ…会長の技を食らってあれほど立ち上がれるとは…
そして、彼女は悔し涙を流しながら、星へ帰っていった。
次来たときは、必ず勝ってみせると言い残して。