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作者: モンブラン博士 (総ページ数: 198ページ)
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*166*
あたしは彼の答えを聞いて、不思議に思いました。
どうして心理学の用語を知っていることが、試合の勝ち負けに影響するのか。
彼の考えていることの意図が、あまり読み込めませんでした。
彼はあたしにラリアートを放ってきましたので、それを開脚飛びで避けると彼は、
「俺は、こう見えて心理学は好きでね。今からそれをたっぷり教えてやるせ!」
彼はあたしをジッと見て、口を開きました。
「お前、会長のことが好きだろ?」
なんと、あたしの思いを、見事に言い当てられてしまいました。
実は、あたしはスター様を師匠として、尊敬していると同時に、理想の男性として、いつの間にか、好きになっていたのです。
彼は普段はあまり頼りない、所謂ダメ人間のような人ですが、実際は試合の展開を先の先の先まで読む予測に、ユーモアのセンス、そして試合で闘うときの優雅さや敵への思いやり、常に感謝を忘れず、仲間を大切に思っているところ、上げればきりがありませんが、素晴らしい人なのです。
もっとも、彼は重度のショタコンで、あたしのことなんて、弟子のひとりとしか思っていないかもしれませんが…
それに、年齢の問題もあります。
スター様は見かけはイケメンの成人男性ですが、数千年以上生きている宇宙人。
あたしとは、寿命が違う。
彼は年を取らないのに対し、あたしは年齢を重ね、彼よりも先に、死んでいく―
宇宙人と人間の織りなす、甘く切ない恋の味。
それはまるで、とろけるミルクチョコレート…
「…試合は?」
ナルカンさんにツッコまれ、あたしはハッとして、現実に帰ってきます。
危ない、危ない。
もう少しで連載漫画でも始めましょうかしらと思っていましたから、いい時期に現実の試合に戻れてよかったですわ。
これからは妄想は控えめにしなきゃいけませんわね。
「フン。人間の恋愛なんてくだらない。どうせ、そんな恋愛なんて、愛の行為だけやって終わり。そんなものさ。もっとも、だから人間はいつまでたっても、俺たち神には近づけない!」
彼のその一言で、私の恋愛に対する清らかで美しいイメージが、まるで鏡のように粉々にくだけ散ってしまいました。
「あなたは、許しませんわ!」
「ほー、怒ったか。これだから、人間を相手にするのは最高なんだ」
彼はあたしが繰り出すパンチを小さな動作だけで避け続け、当たらせてくれません。
どうやら、この神様は見た目以上に侮れなようです。
「そろそろ終わらせる!『Dクアゲイスト』!」
彼の掌から暗黒のビーム状のエネルギー波が放たれ、あたしに紐のように巻き付き、体を締めあげます。
「きゃあああああっ!」
あまりの苦しさにあたしの口から悲鳴があがります。
「苦しいなら、さっさとギブアップするんだね」
「嫌ですわ。あたしは愛するスター様のために、あなたに勝たなくては…」
「心ではそう思っていても、お前の体は限界なんだよ!」
彼はサマーソルトキックであたしの顔面を攻撃します。
鼻から血がポタポタ流れ落ち、マットを赤く染め上げます。
あたしは、イチかバチかの賭けに出てみることにしました。
目には目、歯には歯…能力なら能力で勝負です!
「ナルカンさん、ルーレットであなたの運勢を試してみませんか」