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作者: モンブラン博士 (総ページ数: 198ページ)
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*83*
ボロン♪
あたしが憎き白河に怒りの拳をぶち込もうとしたその刹那、どこからともなく、低い声と怪しげなギターの音色が聞こえてきた。
「おおーっと、きみたち派手に戦っているねぇ」
ボロンボロロロン、ボロボロロロン♪
「まあ、ここは一興、戦闘を盛り上げるために、この私が演奏してあげよう」
見えない声が聞こえると同時にギターの音が激しさを増す。
ジャカジャン!ジャカジャカ、ダラララララン♪
「む、こ、この音色は…まさか…!」
トリニティさんが動きをとめ、警戒する。
「んー、どうやらキミは気づいたようだねぇ。でもねえ、もう遅いのだよ」
突如正面から、物凄い風圧が飛んできた。
あたしたちはとっさにはねのけてその風圧を避ける。
その攻撃は地面をえぐり、植えられている木を粉々に砕き、ビルを破壊する。
な、なんなのよ、この攻撃は?
「ほほう。どうやらうまく避けきれたようだね。褒めてあげよう。だが、次はそううまくいくかな?」
声が聞こえた瞬間、あたしの肩に激痛が走る。
見てみると、肩に斬り傷を負っており、そこから血が流れてきている。
「真帆さん、あぶないっ!」
いきなり王李くんがあたしを押しのけると、彼の服がビリビリと破けた。
「李くん!」
「大丈夫。皮膚の表面が斬れただけです。ここは僕がみなさんを守ります!」
次々と繰り出される衝撃波の剣を得意のカンフーで弾く、李くん。
けれど、その体は次第にダメージを負っていく。
「なかなかやるな。では、少し曲調を早くしてあげよう。大サービスだ」
バンバン、バラバン、バンバンバラバン、バンバンバラバン…バンバンバンバンバンバン
ダララララララララララララ…
急に音色の調子が早くなってきた。李くんは拳と足蹴りで全ての衝撃波攻撃を弾き返してがんばっているけど、その顔には汗が浮かび、体は傷だらけ。これ以上防ぐのはさすがに無理だろう。
「李、俺も加勢させろ!」
井吹くんが加勢しようとするも、彼はそれを制止する。
「ダメです。ここは僕にやらせてください!あなたたちは早く逃げて!振り向かずに!」
「王李殿、水臭いでござる。拙者たちに頼めばいいものを…」
「それはできません。今のあなたたちでは、彼の攻撃を防ぐことはできないでしょう」
彼の言葉を聞き、トリニティさんが口を開いた。
「行こう、諸君。彼の意志を尊重するんだ」
「でも!」
「ここにいれば、みんな死ぬ。それでもいいのかね?」
「冷たすぎるだろ、王李!俺たちは死ぬときはみんな一緒と誓いあった仲じゃねえか!!」
井吹くんが彼の背中に叫ぶと、彼のオレンジ色の瞳から一筋の涙がこぼれた。
「みなさん、僕はここでお別れです。必ずモノにされた仲間たちを元に戻してくださいね。井吹くん、みなさん、こんな僕と仲良くしてくれて、本当にありがとう―謝謝」