完結小説図書館
>>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック
*13*
ギルド内が応戦する中、ナツの耳にもういいわという声が聞こえた。
言ったのは、お客と呼ばれていた金髪。
「もういいわ、…ひきあげて頂戴。ルーシィは貰ったのでしょう?」
不機嫌な声で「早くなさい」と急かす姿は、まさにお嬢様だ。
「…茨姫や…もうすぐ帰るわ…貴方のお友達を、連れて…」
その声は、ナツにしか届かなかっただろう。
お友達?誰が、ルーシィが。茨姫?誰が、俺達の親しい人の友人が。
「解毒して欲しいなら、俺達が見えなくなるまでついて来るな」
アーティは鼻で笑った。
もう返答は分かっているようだ。
そのままどんどん姿は薄れていく。
そのとき、ナツの熱が引いていった。
解毒してくれたのだろう。
「……」
「ナツ、大丈夫か?」
ナツは頭を抑え、辺りを見わたす。
心配げな仲間の顔、涙を堪えている顔、ボロボロの酒場。
急速に頭が回りだした。
「ルーシィ!」
辺りを見わたしても、いつもの笑顔の金髪はいない。
グレイが小さく、ナツに聞こえるように呟いた。
「…つれて、かれた」
「!……なんで、なんで追わなかったんだ!!」
「命令だ!テメェを死なせるわけにはいかねぇだろ!」
「じゃあ、ルーシィは死んでもいいのかよ!?」
く、とグレイの言葉がつまる。
だがしかし、どっちかを選んでいてもどちらかは死んでいた。
どうしようもない、何を言ってもルーシィは連れて行かれたのだ。
「……助けようよ」
レビィの声が、ギルドの隅まで伝わる。
彼女は、ルーシィと親友だった。
ならなおさら、この状況が嫌だろう。
「ナツは助かった。まだ、まだ追いつく!」
「…でも、」
「ナツ、ルーシィの匂い分かるでしょう?」
すんすん、と小さく匂いを嗅ぐと、ルーシィの匂いは残っていた。
「!残ってる」
「なら間に合う!ルーちゃんを助けようよ!!」
レビィの精一杯の声がギルドに響いた。
「…今考えたら、そう考えることでもないな。…仲間の為なのだから」
仲間のためなら、何でもする妖精女王。
「えへへ、そうですね。…ルーシィさんは、強いですもの」
幼いのに信念を貫き通す、天空の巫女。
「いつも、アイツに迷惑かけてたし。これでお互い様だな」
辛くても立ち上がり戦える、氷の戦士。
「――ああ、ルーシィは仲間だ。…絶対に連れて帰るんだ!!」
そして――、家族のために戦える、火竜。
「俺達が、助けるんだ!!」
「ああ」
「はい!」
「だな」
「…みんな…!」
ミラ達は、急所を免れたもののボロボロのためギルド待機だ。
「…私も、本当は役に立ちたい」
「ミラ」
「でもね…今の私達じゃそれは無理なの。…がんばって」
優しく微笑むミラに、ナツも笑顔で返す。
「ああ!」
そして、5人の妖精がその場を駆け出した。
「はぁ…はぁ……!!」
薄暗い地下で、ローブの男は座り込んでいた。
苦しい、気持ち悪い。
「れ、…ぃ…」
それを遠くで見ていたカルガは冷めた手つきでリンゴを齧る。
果汁が甘く、妙に口に纏わりついた。
「………チッ」
リンゴをその場へ投げ捨て、ローブの男の傍に来る。
「まだ拒否反応があるのかよ?そいつの体」
「ああ……っ、こいつの体自体に…記憶が染みついてやがる……!」
「それは大変なこったな」
まぁ、自分の知らない記憶が流れたら嫌だろう。
カルガは、少し興味がわいた。
「なんの記憶よ」
「…ブレスレットだ」