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*18*
「…まずいなぁ」
攻撃をかわしながら、ミラーリは呟く。
隣でナツと交戦中のアーティに、その声は届いたらしい。
「どうした、ミラーリ」
「…レイガが暴走し始めた」
ナツは地面に着地し、ウェンディの元へ駆け寄る。
「大丈夫か?ウェンディ」
「っは、はぁ…はい!」
膝をつかないように押さえながら、ウェンディは顔を上げた。
ナツは額の汗をぬぐい、二人の会話に耳を立てる。
さきほどレイガ、という声が聞こえた。
きっとそれ関連だろう。
「は?なんで」
「グレイとかいうの…アイツがやっちゃったみたい」
「じゃぁ、もう爆破させてもいいんじゃね」
「だな」
爆破?グレイが何かしたのか。
ナツの足らない頭では、よく分からない。
だが、危険だというのは理解できた。
ミラーリから、魔力が放出される。
「…命令あり、命令あり。爆破開始」
「!」
レイガの頭に指令が伝わる。
体から起動音が鳴った。
「…どうした、いきなり止まって」
「…はは、いきなり見捨てられちまったよ」
レイガはグレイの体にしがみついた。
「なっ、放しやがれ!!」
「頼むから、大人しくしてろ」
グレイの鳩尾に蹴りを入れる。
ひゅ、と空気の抜けるような声が聞こえて気絶した。
「お前も、道連れだっつの」
『…起動した…』
「そんな!このままじゃレイガさんの体がっ」
ルーシィが、慌てだす。
だがレイガはもっとほかに、恐れている事があるようだ。
『…グレイ…が…』
「グレイに、何かあったんですか!?」
『巻き込まれる…頼む、ルーシィ…』
鬼灯を見つめると、綺麗な瞳がうつる。
『俺に、魔力を注いで…少しだけ向こうに行かせてくれ…』
「…!はいっ」
ルーシィは、鬼灯を手に包むと魔力を送り込んだ。
だが、変に力が入らない。
「ぅう…!」
『ここにいて、魔力が茨姫に捕らわれている!?』
「そんな…!せめて、貴方を!」
力いっぱいに鬼灯に魔力を流し込む。
『…これが、最後の俺の姿だ…』
「えっ…?」
『鬼灯は、一回解放されると、そのまま消滅してしまう』
体も、心も、遺伝子レベルでも残らない。
「…う、ぅ…」
「よぉ、目が覚めたかよ」
グレイが体を動かそうとするが、縛られていて動かない。
つくづく思う、運がないなぁと。
「…1分、俺が爆発するまでの時間」
「は?」
50
「ふぅぅうぅ!!」
『くそっ、まだだ…!』
40
30
20
10
「…悪いな、ガキ」
「レイ、ガ。てめぇっ、爆破って」
3
「……
グレイ」
「え、」
ドンッ
本物のレイガが最後に、した行動は。
恩返しだった。
グレイを、なるべくと力強く突き飛ばす。
「レイ、」
爆風で、全てが見えなくなった。