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作者: 桜 (総ページ数: 28ページ)
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第五章「記憶ノ滝へ」
壱 謎解き
つれてこられた二人は、久しぶりに見る日の光にまぶしそうに眼を細めた。眼を細めながらも、あざ笑うかのようにどすんと畳に腰を下ろした。
「これから言うことは、あくまで推測で、真実ではないかもしれません。けれど、――和樹くん、誠司様。少し、気になったことがあるんです。」
二人は、何も答えなかった。
それが二人にとっての最善の策だった。
「『あいつが居そうな滝の裏にはいなかった』、誠司様はそういいました。そのときは、総司さんのことを考えながら探したんだな、と思いました。けれど、少しあとに気づいたんです。『なぜ、滝の裏といったんだろう?』って。」
周囲がざわめいた。
誠司だけが、平静を保って、雪音の顔を見ていた。
「探した場所は、もう探す必要はない。それが一番の効率の良さです。けれど、わざわざ、滝の裏といわなくてもいいんじゃないか。そう思ったんです。」
「それがどうした?。何が言いたい?。」
和樹が食ってかかるように雪音をにらめつける。
雪音は、平然としながら、言った。
「あなた方二人が、総司さんの首を隠したのではないか、といいたいのです。」
「・・・・・・・・!!。」
さらに、雪音は、続けた。 ・・・・
「総司さんの首は二十五日にはねられた。それも人知れず。それを知っていたのは、直接話しを葵様から聞いたという少数精鋭のそこの四人と領主様のみ。けれど、まだ居たんです。」
「だれだ、というんだ?。」
大紀が不安気味に聞く。
もしかしたら、彼はわかったのかもしれない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「総司さんの首をはねた、誠司様と和樹くんです。」
そこにいる、総てのものが絶句した。
静けさが部屋を包み込む。外から楽しそうに遊ぶ子供たちのはしゃぎ声が聞こえた。
「ですよね?。誠司様。あとは、お話して、くださいます・・か?。」
ふぅ、と長いと息を誠司が吐いた。
それは、この張り詰めていた空気を、ほぐすためのものだったのかもしれない。
「適わないな、本当に、お前には。雪音。ただ、少し間違いがある。」
「え?。」
「まあ、それは、これからわかる。」
「・・・・総司さんの首は、どこですか?。」
「・・・アレは・・・・・。」
ごくりと、みなが固唾を飲む。
そして、誠司は止めを刺した。
「記憶ノ滝のうら、に居る。」
もうだれも、口を出すものは居なかった。
「記憶・・ノた・・き?。」
「ああ。」
「って何ですか?。」
「おまえ、知らないのか。――いまは未知の場所にある滝だ。記憶をよみがえらせてくれる名所として知られる。だが、そこで人が何を見たのか、誰も知らない。誰一人かえってこれなかった。記憶のない人間たちは。」
じゃあ、もしかしたら。
一つの予感が、雪音の頭を横切る。
「私の記憶も、よみがえらせて、くれるんですか?。」
「ああ。話によるとな。――――いくのか?。」
そう聞いたのは愚問だったのかもしれない、と誠司は思った。
雪音の顔を見たら。
「はい。」
強い決意のこもった声が、部屋に響いた。