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ユキノオト
作者: 桜  (総ページ数: 28ページ)
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10~ 20~

*10*

テスト無事終了しましたー!
結果は残念!でしたが、次もがんばります!
 
それでは、ユキノオトをお楽しみください。


第四章
弐 不安、そして-----

 ふすま越しに聞こえたもの。
 ----悲しむ
 ----むごかったな。
 ----俺たちのこと、忘れる可能性もあるんです。
 あれは、何だったのだろう。
 みなが話していることは、予想はついた。----記憶。
 そう、『記憶』なのだ。
 雪音が、覚えていない十歳までの記憶。総司さんと出会うまでの記憶。
 ----わたしの、しらない、きおく・・・・
 そして、唯一引っかかった、一言。
 ----総司様と
 それは、総司さんも一緒に何かを見ていたということなのだろうか。
 むごいもの、その一言で済まされるほどの、参上を、自分の脳は、刻み込んでいるのか。
「・・・・失礼します。雪音です。お入りしても、いいでしょうか?。」
 部屋の中が、一気にざわついたのがわかった。
「あ、ああ。入れ。」
 ふすまを開けて、顔を上げる。冷や汗がにじんでいる我が主の顔。そして、必死に驚きを隠そうとする、仲間たち。そして、乾いているだろう、自分の目と冷ややかな相貌。
「話を、聞いていたか?。」
「・・・・・・・・・・。」
 雪音は、何も答えない。
 ただ、主の顔を見て、にっこりと、悲しそうな笑顔を作った。
 主の悲痛な目が見えた気がする。
 だけど、もう、もう何も見えない。
 ぽた、と一つ、小さな水音が聞こえた。

***   ***   ***   ***

 雪音が、泣き止むまでに、そう時間はかからなかった。
 なきやむと、雪音は、またにっこりと笑った。
「むりに、笑うな。」
 それが、精一杯の主としての---大紀としての言葉だった。
「領主様----いえ、大紀様。」
「なんだ?。」
「ひとつ、気になったことがございます。もしかしたら----。」
「もしかしたら、なんだ?。」

「総司さんの首を見つける手がかりになるやも知れません。」

 その場の全員が驚いた。
 驚いて、ざわめき、雪音のほうを見た。真剣な双眸。うそ一つつかぬまっすぐな瞳。そして----
 悲しくゆがんだ顔。
「なにか、わかったのか?。」
「はい。もしかしたら、ですけど。」
「なんだ?。」
「・・・・あの地下牢の二人を、ここに連れてきてほしいんです。話は、それからです。」
「・・・・・。」
 大紀は、押し黙る。そして----
「わかった。つれてこよう。」
 そう指示を出したのだった。

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