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作者: 桜 (総ページ数: 28ページ)
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第八章 弐 総司の想い
『はなしてみよ。これまでの総てを。真実を。』
それを聞いたとき、総司は驚いて目を丸くしていた。頭から何もかも飛び去ったような顔をしていた。――初めて。
初めて、大紀が総司に命令をしたのだ。
これまでは、命令ではなく、ああしてほしい、こうしてほしい、だのの、『願い』だった。
それは、何かの始まりを意味していたのかもしれない。
総司は、すぐに気を戻し、総てを語った。
「俺は、俺の名は、浅倉総司じゃない――――――――――・・・・。本当の名前は――――――――――。」
真名。自分が一番嫌いだった名前。好きでもない両親からつけられた、残酷なもの。
「蒼路宗次(アオミチ ムナツグ)。というんです。」
蒼路――それは、蒼路ノ国の領主一族だけが持つ名前。
「じゃあ、あなたは――――――――――・・・・。」
紗枝が、おびえるように総司を見る。
「ああ―――――――――――――。」
「おれは、誠司様――貴殿の、兄だ。」
*** *** ***
蒼路宗次が生まれたのは、蒼路の家。蒼路ノ国の領主継承者として生まれた。けれど、それは悲劇の始まり。
昔、その国は、葵の横暴な誠司に耐えられず、反発している村があった。白鬼ノ村。妖怪の住む村といわれる。そして、彼らは、ある日、ものの見事に城にもぐりこみ、領主を追い詰めた。
白銀の御髪。海のような、空のような、深い蒼瞳。
だが、彼らには力がなかった。
幼いころから武芸の達人だった葵には、誰も叶わなかった。
誰もが、骸と化していく。
最後の一人。それは―――――――――・・・
『のろってやる――――!!。いつか、我らの村を破壊する者め。いいか、先身のわしには、見える。お前にもうすぐ子供が生まれる。その子供には、額に、背中に、足に、体のさまざまな部分の計七箇所にあざを持って折る。その子供は、いつか、お前の国を、この国を滅ぼすものとなろう!!!!!。』
そして、死んだ。
あっけなく、すぐ枯れる花のように。
そして、そのすぐ後、総司――いや、宗次は生まれた。
体のあちこちの――――計七箇所のあざと一緒に。
葵は、すぐに、宗次を殺そうとした。
けれども、宗次は、領主継承者。簡単には殺すわけにはいかなかった。
そして、三歳のころ、誠司が生まれ、宗次は、その役目を終えたかのように、山中に捨てられた。
『いい?。きっと誰かが迎えに来るから。それまで待ってるんだよ?。』
知っていた。だれも迎えに来ないことなんて。
だけど、まっていた。かならずきてくれる、だれかを。
だれも足を踏み入れない、未知の村が先にあるという山中で。
白い雪のような桜が舞う夜。
山の中では、学んできたことを生かして、何でもできた。生きていけた。けれども、だれも、ここには来なかった。
そして、宗次は、ひとりぼっちになった。
『おまえ、なにをまってるんだ?。暇だったら、これから先。おれと、一緒に来ないか?。』
そして拾ってくれたのは――――――――・・・・