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我落多少年とカタストロフ【完結】
作者: 月森和葉 ◆Moon/Z905s  (総ページ数: 42ページ)
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「会長……最近何かあったのでしょうか?」
「いや、わからん。が、しかし、何かがあった、またはあることは確かだろうな」
 この会話は生徒会副会長と書記の、北都と三波の会話である。
 およそ兄弟らしからぬ会話(というか言葉遣いだが)、生徒会長である霧を心配していることは伺える。
「北都、そろそろ会長を起こさないとまずいのでは?」
「ああ、そうだな」
 心優しい後輩が起こしてくれようとしたのだが、タイミング悪く、教師が生徒会室の扉を開けた。
「おい、北城居るか?」
「うあ……」
 この妙な声を上げたのは紛れもない北都である。
「どうした? 日和……おっと、妹も居るのか、北都」
 この兄弟は上の学年に兄が居る。よって、兄、弟と呼ぶわけにもいかず、二人以上が居る場合は、教師達は彼らを下の名前で呼ぶ。
「おい、それ誰だ?」
 教師が指差した先にいるのは、机に突っ伏して寝ている霧である。
 絶体絶命の日和兄妹だった。
「……すみません、先生。会長はちょっとお疲れの様子で……。会長、起きて下さい! 会長!」
 揺すってみるも、霧は目を覚まさない。
 北都と三波の焦りは高まるばかりだ。
 堪りかねた教師が、眠っている霧の頬を思い切り抓り上げた。
「おい、こら北城! 生徒会室で寝るな!」
「ふぁっ!?」
 妙な声を上げ、霧が眼を覚ました。
「ったく……。会長のお前がそんなだと、他の生徒にも影響を与えるのだぞ!?」
 そこからたっぷり四十分、男性教師による説教が続いた。
 北都と三波はとばっちりである。
「今日はここまでにしといてやるが、次やったらどうなるかわからんからな。いいな」
「はい……」
 それからやっと用事を言い付け、職員室に戻っていった。
「…………」
 何かに疲れ切ったような、そんな空気が生徒会室を満たす。
「……ごめんね、二人とも」
 そんな中、霧が口を開く。
「僕の所為で巻き込んじゃったね。お詫びに何か奢ってあげるから、今日はもう帰ろう」
「いえ、会長の所為ではありません。私たちの不徳の致すところです」
 男子高校生の台詞とはとても思えないが、北都は霧に向かって頭を垂れた。
「申し訳ありませんでした」
 それと同時に三波も頭を下げる。
「ちょ、ちょっと二人とも……。やめて、顔上げてよ。ほんとに僕がいけなかったんだから」
 すると三波が顔を上げる。
「取りあえず、先程先生が持っていらした用事は私にやらせて頂きます。その作業は会長より私の方が向いていると思われるので」
 教師が持ってきた用事は、委員会での必要経費と思われるもののリストアップである。
 彼女は会計も兼ねているので、恐らく霧よりいい仕事をしてくれるだろう。
 と、少なくとも霧はそう思っていた。
 しかし現実は、何をやらせても、どんな人と比べてみても、霧の成績の方が遙かに良い。
 ただ、周りの人間も、霧でさえ、その事実を知らなかった。

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