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我落多少年とカタストロフ【完結】
作者: 月森和葉 ◆Moon/Z905s  (総ページ数: 42ページ)
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10~ 20~ 30~ 40~

*14*

 頭を下げる二人をなんとか説得し、帰り道に霧は二人に飲み物を奢った。
「アイスとかでも良いのに」
「いえ、自分は甘いものは苦手ですので」
 北都はそう言って、アイスコーヒー(ブラック)を選び、三波は、
「減量中です」
 と言ってノンシュガーのレモンティーを選んだ。
「二人とも、無欲だねぇ……」
 半ば呆れたように霧が言うと、二人は、
「下手に欲張っているより良いかと思いまして」
「そのように躾けられました」
 と返した。
 そういう霧も、今日はみかん水(百五円)である。
「会長こそ、それ……」
「あー、もうなんかね、食欲無くなってきたからこれでいいやとか思って」
「夏バテですか?」
「そうかも」
 はは……と力無く笑う。
 確かにこの茹だるような暑さは、やる気というやる気全てを根こそぎ浚っていってしまう。
「しかし、暑いな……」
 握ったペットボトルから結露した水が、コンクリートの地面の上に落ちていくつもの黒い染みを作った。

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