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作者: 月森和葉 ◆Moon/Z905s (総ページ数: 42ページ)
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*23*
中間テストも無事に終わった休日。
霧は、人が溢れる街中で人を待っていた。
カジュアルな私服に、リュックサックを右肩に掛けている。
白いパーカーに、黒地に白抜きでデザインがプリントされた長袖シャツ、黒いカーゴパンツ、極め付けが黒いリュックサックという全身モノトーンのファッションだが、それがまた霧の蒼い瞳に似合っている。
携帯端末の画面で時間を確認し、また視線を前に向けた。
空は透き通るように蒼い、秋が近い晴れ空だ。
人混みを掻き分けるように、こちらに向かってくる姿が見える。
やがて霧の前に立つと、少し息を切らせた様子で慌てて尋ねて来た。
「すいません、お待たせしたでしょうか!?」
少々乱れてしまったスカートの居住まいを正し、霧の顔を見つめて三波は言った。
「ううん、そうでもないよ」
作り物でない笑顔を浮かべ霧は改めて三波の姿を見た。
いつもの素っ気無いセーラー服と違い、随分と華やかな印象である。
薄い緑のタートルネックに、モスリンの半袖カーディガン、そして少し濃い緑のミニスカートの下に膝下までのレギンスを履いている。
ショートカットの髪には小花があしらわれたカチューシャを挿している。
「……あの、何か変でしょうか」
三波が心配になって問うと、霧はますます笑顔になって答えた。
「とんでもない。制服よりすごい似合ってる」
「ほんとですか!?」
忽ち表情が明るくなり、頬にも赤みが差す。
「うん。それと、今日は僕のことは会長って呼んじゃ駄目。折角二人で出てきたんだから、名前で呼んでよ」
「え、あ、はい……えと、霧さん……」
顔に満面の笑みが広がる。
「そう。それでいいの。じゃあ行こうか」
そう言って三波の手を引いて歩き出した。
「え、あの、会長……」
「いいから。この人混みじゃはぐれちゃう」
霧は行く宛てがあるようでどんどんと歩き出す。
三波はそれにはぐれないように、掴んだ霧の手を離さないように必死で後に着いていく。
その関係がいつもとは全く違うように思えて、三波は笑みを零したのだった。