完結小説図書館

<< 小説一覧に戻る

我落多少年とカタストロフ【完結】
作者: 月森和葉 ◆Moon/Z905s  (総ページ数: 42ページ)
関連タグ:
 >>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック

10~ 20~ 30~ 40~

*24*

 人混みの街を、二人手を繋ぎ歩いていく。
 途中何度か躓きそうになるも、霧の後を必死で追った。
 顔を上げると、こちらに気付いた霧が笑顔を見せてくれる。
 三波は、この瞬間に幸せを心から感じていた。

「ここでちょっと休もうか。待ってて」
 そう言って霧は三波をベンチに座らせると、何処かへ歩いていった。
 その間に携帯端末を確認すると、北都から通信文が届いている。
 内容は、母には詳細を伝えたが、兄には友人と出掛けているというように伝えた、というものだった。
 少し笑って、礼を込めた文章を打ち込み、送信する。
 作業を終えて端末を鞄に仕舞うと、丁度霧が戻ってきたところだった。
 両手に一つずつクレープを持っている。
「どうしたの?」
 そう言いながら片方のクレープを三波に差し出す。
 礼を言い、北都から連絡があったと言った。
「あはは、北都君にも迷惑掛けちゃったね。お土産買って行かないと」
「兄は異様な心配性なもので……」
 この場合の兄とは方英のことである。
「彼はそれっぽいね。なんかこう……性格とか」
「申し訳ありません……」
 恥ずかしそうに俯く。
「大丈夫だよ。ほら、早く食べないと冷めちゃうよ?」
「あっ、はい……!」
 そう言われ、三波は慌ててクレープを口に含んだ。
 中には甘い苺のクリームが入っていた。

23 < 24 > 25