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我落多少年とカタストロフ【完結】
作者: 月森和葉 ◆Moon/Z905s  (総ページ数: 42ページ)
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10~ 20~ 30~ 40~

*3*

「じゃあな、また明日」
「またねー」
 三人の家への道が分かれる場所。
 この道が、彼らの行き先を暗示しているのかもしれない。
 一人になったとき、少年はぽつりとひとりごちた。
「……今年は、あの年か……」
 その呟きに何があるのかは分からない。
 でも、ただごとではない何かが込められているように思う。
「ただいま」
 何事もなかったかのように、少年は家の扉を開いて言った。
「母さん? ……まだ帰ってないのか」
 少年――霧のことだが――は何かと生徒会長や天才ともてはやされてはいるものの、家庭に大きな問題があった。
 彼には父親が居ない。
 たった一人の家族の母親も、息子と二人の家計を立てるために働いていて、同じ家に住んでいようともあまり会うこともない。
 まだ高校生の少年が親に会うことが少ないというのは、これは由々しき事態である。
「……ふぅ」
 スクールバッグを首から抜いて、ソファにどさりと座り込む。
 暑い夏の日だというのに、家の中は何故かどんよりと重たい空気が漂っている。
 まるで梅雨の雨の湿気のようだ。
 制服もそのままに、霧はソファに横になる。
(……お昼ご飯、食べなきゃ……)
 考えていたは良いが、そのまま眠り込んでしまった。

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