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我落多少年とカタストロフ【完結】
作者: 月森和葉 ◆Moon/Z905s  (総ページ数: 42ページ)
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*9*

「おい、キリ! 起きろ! 帰るぞ!」
「ぅあっ!?」
 霧が顔を上げると、二人が彼の顔を覗き込んでいた。
「よく寝てたねー。もう五時だよ」
「宿題も大分片付いたし、帰るぞ」
「あ、ああ……ごめん……」
「謝んなって」
 申し訳なさそうにする霧に(二人の勉強を見ると言って来たのに寝てたのでは意味がないからだ)、悠人と遥香は笑って言った。
「助かったよ。また見てくれな」
「ありがとね」
 二人の屈託のない笑顔を見ると、その申し訳なさが少しだけ和らいだ。
「あ、キリ、口の横にケチャップついたままだよ」
「え?」
 慌てて手首で口元を拭う。
「とれた?」
「とれてないよ。ちょっと動かないで」
 遥香はポケットからハンカチを取り出すと、それで霧の口に付いたケチャップを拭い取ってやった。
「はい、もういいよ。じゃあ帰ろうか」
 椅子に置いていた自分の鞄を取り上げ、くるりと後ろを向く。
 それを、悠人が複雑な顔で見つめていた。
(あれ……?)
「何してんの? 置いてくよ」
 男子二人は遥香に置いていかれないよう、慌ててその後を追った。

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