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我落多少年とカタストロフ【完結】
作者: 月森和葉 ◆Moon/Z905s  (総ページ数: 42ページ)
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*8*

「お前は、すぐにでも始めたいのではないか?」
 また、暗い部屋だ。
 目の前に立っているのは、相変わらず何の変化もない黒い外套に黒い頭巾の人物である。
「この世界を、早く終わらせたいのだろう?」
 少年は俯く。
「僕は……僕はまだ彼らと一緒にいたい。まだ、終わりは来ない……」
「ほう? まさかそんなことを言うとは、新世界の神になるべき男が。随分と感化されてしまったようだな。本来のお前は、もっと冷徹な存在ではなかったのか?」
 人物は少年を嘲笑うかのように、唯一見える口元から辛辣な言葉を紡ぎ出す。
「それとも、世の中の天才だ、神童だと言う声に惑わされてしまったか? 他にない唯一無二の存在という言葉が、お前をこの世界に縛り付けているのかもしれないな」
「違う!」
 声を荒げて少年は答える。
「僕は、神童なんかじゃない! ただの……ただの、馬鹿な高校生だ」
 最後は声が聞き取れないほどに声が小さく萎む。
 すると、人物は高らかに声を響かせて笑った。
「はっはっは! お前を馬鹿と言ってしまったら、この世にはそれよりも馬鹿な人間しか残らないではないか! ノーベル賞受賞者とて危うい。それほどまでに、お前の知能指数は人類を遙かに超越している」
 くく……、と未だ笑いが収まらない様子で、人物は続ける。
「お前は天才とか神童とか、そんな器では収まらないのだよ。全宇宙を越えるやもしれぬその才能に、皆が嫉妬するのだ。そうなる前に……」
 暗かった部屋が光に満たされてゆく。
「この世界を、終わらせるのだ……」
 それと同時に、微かに友人の声が聞こえる。
 自分の名前を懸命に連呼している。
(僕を、呼んでる……?)
 顔を上げると、暗闇が消え去っていった。

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