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我落多少年とカタストロフ【完結】
作者: 月森和葉 ◆Moon/Z905s  (総ページ数: 42ページ)
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10~ 20~ 30~ 40~

*7*

 数分後、悠人がシェイクの紙コップを二つ持って席に戻ってきた。
「ほい、キリの分。でさ、あとでこの問題教えてくんねぇ?」
 鞄から数学の問題冊子を取り出し、付箋を貼り付けたページを開く。
「うん、いいよ。もう少しで食べ終わるからちょっと待ってね」
「あ、あたしも!」
 遥香も残りのシェイクを一気に吸って言った。
「いいよ。遥香はどれが分からないの?」
「あのね……」
 今日彼らが集まった理由はこれである。
 夏休みの宿題で、分からない部分を霧に聞くことだ。
 なんと熱心な、と思われるかもしれないが、宿題を全て提出しなかった場合、内申が下がりに下がってついには退学になったという前例があるからだ。
 そんなわけだから、この学校の生徒は比較的真面目に宿題に取り組んでいる。
「なあキリ。これ……」
 悠人が漢字の難読ページを指差して霧に問うた。
「これ? えっとね、『あんぎゃ』かな」
「あんぎゃぁ? これでどーやってあんぎゃて読むんだよ?」
「まあ難読漢字だから……」
 僕に言われても、と返す。
「ったくよー……」
 悪態を吐きながらも、悠人はまた問題集に向かった。
 そんな悠人を、遥香が少し赤い顔をして見つめているのである。
「はる……」
 霧がそれに気付いて声を掛けようとすると、遥香は慌てて更に赤くなって霧に黙っているようジェスチャーした。
 霧も黙って頷く。
 彼女はまだ少し赤い顔で、悠人には黙っているようにと伝えてきた。
 頷くと、遥香は少し照れくさそうに笑う。
 そんな友人の恋心を、応援しようと誓った霧だった。

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