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我落多少年とカタストロフ【完結】
作者: 月森和葉 ◆Moon/Z905s  (総ページ数: 42ページ)
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*6*

「ねぇ、ニュースみた?」
 ファストフード店で、遥香がシェイクのストローを銜えながら言った。
 勿論、シェイクは悠人の奢りである。
「あ?」
 悠人は財布とにらめっこしながらの返事だ。
「なんかさ、今、地球がやばいんだって!」
「はぁ? RPGのやり過ぎじゃねぇの?」
「だって、ニュースで言ってるんだよ!? それがRPGのやり過ぎな訳ないでしょ!」
 遥香は少し熱くなって机を叩いた。
「2012年のマヤの予言は知ってるでしょ。それに続きがあったんだって。で、科学的にもそれが証明されてるんだって!」
 少し(かなり)呆れ顔で財布から顔を上げる。
「科学的って……。しかもそんな何世紀も前の話だろ? なあ、キリはどう思う?」
「え? ああ、うん……」
 囓りかけのホットドッグを机に置いて答えた。
 その顔が心なしか堅い。
「どうしたんだよ?」
「ううん、何でもない」
「そうかよ?」
 霧の蒼い眼が、揺らぐことなくある一点を見つめている。
 しかしその視線の先には何もなく、中空を見つめているとしか思えない。
「霧……?」
 心配になった遥香が、彼の名前を呼んだ。
「あっ、ごめん! なんかぼーっとしちゃって……」
「大丈夫……?」
「うん」
 遥香はまだ心配そうな顔つきである。
「よっし、じゃあ俺がキリの分のシェイクも奢ってやるから、何があったか知らんが元気出せ!」
 そう言うなり、財布を持って立ち上がり、霧の背中をバンと叩いてからレジに向かって行った。
「……良い奴だよね、あいつ」
 霧が背中の痛みを抑えていると、遥香がぼそりと言った。
「……うん」
 彼も返した。
 悠人が友達で良かったと、心から思った。

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