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僕は名のない公園で青空を見上げる【完結】
作者: 桜音 琴香  (総ページ数: 40ページ)
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10~ 20~ 30~

*1*

同じ美術部の夏島かをりという女の子に
呼び出された。彼女は同じ2年生で、
バレー部の助っ人もやっているらしい。
「あたしね、絵はあんまり得意じゃないの」
屋上の心地よい風が僕等を包む。
「なのにどうして美術部に入ったか、聞きたい?」
夏島かをりが悪戯気に笑う。綺麗な髪の
ポニーテールが揺れる。僕は何も言わずに頷いた。
「水沢くんに近付きたかったから」

夏島かをりの頬が赤くなり、瞳が左右に揺らめく。「好きなの。ずっと、好きだったの。水沢くん、
気付いていなかったでしょ?」こういう風に
告白してきた女の子は何人もいた。僕のどこが
良いのか分からないが、沢山いた。
「ごめん。僕は好きな人とかいらないんだ」
出来る限り優しく、彼女を傷付けないように言った。
彼女は寂しそうに下を向いた。瞳がうるみだす。
だが、すぐになにかを思い付いたように僕を見た。
「じゃあ、お試しってことで付き合おうよ」
お試し。恋愛は人生においてとても大切なものだと
考えていたが、どうやら違ったようだ。

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