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僕は名のない公園で青空を見上げる【完結】
作者: 桜音 琴香 (総ページ数: 40ページ)
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作者: 桜音 琴香 (総ページ数: 40ページ)
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*11*
数学の授業中、友人の平野が早弁をしていた。
それはただ単にお腹が空いて食べているというより、
先生にバレるかバレないかの緊張感を
味わっているようだった。アイコンタクトで僕にも
早弁の誘いをしてきたが、数学の先生はとても
厳しい人なので断った。それに、僕は弁当ではなく
購買のパンを食べるので早弁は出来ない。数学の
教師は泉という若い男性教師だ。今まで数人の
早弁をした生徒を説教している。平野が早弁を
していることは皆 知っている。それぞれ笑いを
こらえてノートをとっていた。人気者で
お茶目な平野のことだ。皆の笑いをとる為に
やっているのだろう。しかし、先生の目は
平野の口元にいっていた。板書を止め、平野を
冷たい目で見ている。平野はそれに気付いた様子なく
食べ続けている。昼になれば皆に昼食の分け前を
求めるだろう。「平野」泉はチョークを平野の
額に当てた。見事に当たったので、皆が
クスクスと笑い出す。「って!先生、それ体罰」
平野の冗談に教室の笑い声がいっそう増す。
「体罰というのは長時間 正座をさせたり、
精神的ストレスを与えることだ」しかし、
頭の固い泉に冗談は通じないようで、皆の眉間に
皺を寄せさせる。「授業を再開する」泉は
気まずそうに咳払いをし、教卓の上に手を置いた。
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