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僕は名のない公園で青空を見上げる【完結】
作者: 桜音 琴香  (総ページ数: 40ページ)
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10~ 20~ 30~

*16*

美術部にかをりは来なかった。部長によると、
かをりはバレー部の助っ人を優先的に
行っているらしい。彼女はバレー部の入部届けを
渡され、悩んでいるとも聞いた。僕の学校は
部活を2つやることは許されていなく、所属部と
助っ人を同時にやる人も多い。ただ、部長や副部長を
やっている人は助っ人が出来ない。部活にとって
大事な存在だからだ。だが、部長はこっそり
サッカー部の助っ人をやっている。サッカー部の
顧問は甘い性格の人らしく、叱られないそうだ。
「かをりちゃん、早く来ないかなあ」部長は口を
すぼめて呟いた。それは単に部長として
気になっているのか、恋愛感情が芽生えて
気になっているのか。「バレー部に入るかも
しれないですね」部長が僕を見た。そして、
小さく溜め息を吐いた。

「水沢もそう思う?だったら俺バレー部いきたいな」
この間は川上凛が可愛いとかいっていたはずだが、
もう心変わりをしたのだろうか。
「バレー部は女子限定ですよ」僕は筆を水に浸けた。
水に緑色が鮮やかに広がっていく。今日は
森の絵を書いた。生い茂る木の緑色は水より
絵の具の量が多い。だからか、水によく混じる。
「分かってるってば。冗談だよ」部長は僕に
向かって笑うと、筆を置き川上凛のところへ
向かった。「川上ちゃんは絵が上手だねえ」
川上凛の顔が赤く染まった。「そんなことないです」
それは嘘の謙遜ではなく、本当に謙遜しているよう
だった。「ねえ、俺と付き合わない」部員が
筆を動かす手を早める。気まずいというよりは、
恥ずかしいからだろう。「結構です」川上凛は
そう言ってから、「好きな人がいるので」と
付け足した。

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