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僕は名のない公園で青空を見上げる【完結】
作者: 桜音 琴香  (総ページ数: 40ページ)
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10~ 20~ 30~

*21*

珍しく、川上凛が部室に来なかった。元々
うちの部は部員同士のお喋りがあまりなく、
川上凛の話題に触れる人はいなかった。部長は
誰にでも話しかける友好家だが、川上凛のことを
気にかける様子もなかった。川上凛となにか
トラブルがあったのかと思い、僕は自ら川上凛の
ことを話題に出してみた。「部長、川上さん
どうしたんでしょうね。休むと連絡ありました?」
僕は絵を描く部長の顔をちらちらと見ながら
訊いてみた。すると、部長の顔に苦い色が
走った。「さあ、俺には関係ないよ」今の部長の
様子からして、二人の間になにかトラブルが
あったようだ。川上凛が交際を断ったのだろうか。
「ですが、部員が休んだのですよ?夏島さんの時は
もう少し気にかけていたと思いますが」
言い終わった後に、僕は後悔した。部長が
苛立ちの表情を見てたからだ。

「知らないよ、そんなこと。夏島は数日も
休んでいるから心配なんだ。川上はたった
1日しか休んでいないじゃないか」いつもは
二人のことをさん付けで呼ぶはずだ。
部員の目が絵から離れ、僕達を見る。
バレないように、適度に絵を見ながら。
「夏島さんの時は一日目から心配していました」
「それはたまたまだろ。水沢は何が言いたいんだよ」
お互いの視線が敵意が溢れた視線になる。
話は平行線だ。僕がかをりと川上凛のことを
比べると、部長はだからどうした、と
言い返してくる。この話はどちらかが身を引いて
終われる話ではないようだ。僕は部長から
視線をはなして、自席に戻った。

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