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僕は名のない公園で青空を見上げる【完結】
作者: 桜音 琴香 (総ページ数: 40ページ)
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作者: 桜音 琴香 (総ページ数: 40ページ)
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*3*
川上凛のことを言っているのだろう。川上凛とは
同じ2組だが、一言も話したことがない。確か髪は
ショートカットで、科学の成績が学年4位だったと
思う。「知ってた?」かをりが僕の両肩に手を
おいた。僕の首筋に彼女の髪がふわりと重なる。
「ううん」僕は首を振った。かをりの髪から
石鹸のような匂いがする。「そっか」どうして
川上凛の話題を出したのだろう。あの悪女のような
笑みからして、なにか狙いがあるはずだ。
「水沢くんは、あたしのこと嫌い?」かをりは
僕から離れ、窓を見た。「いや、別に」
心臓の音がする。まるで耳に心臓があるみたいに、
心臓の音がする。「じゃあ」かをりが僕を見た。
表情がどこか大人っぽく、色っぽかった。
「誰が好き?」僕は唾を呑んだ。蝉の音が僕の耳を
刺激し、鼓動の音を消す。「いや、だから僕は
好きな人なんて作らないんだよ」僕は少し
大きめな声をだした。「分かってるよ。でも、でもね
あたしは水沢くんのこと好きだから、
好きって言ってほしいの!」
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