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僕は名のない公園で青空を見上げる【完結】
作者: 桜音 琴香  (総ページ数: 40ページ)
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10~ 20~ 30~

*7*

美術部に訪問者が来たのは、下校時刻ギリギリ
だった。茜色に染まった空を描いていた時、
ノックの音がしたのだ。最初はその女の子が
誰なのか分からなかった。猫の毛のように
細い髪の毛が美しく、奥二重が目立つ女の子
だった。「えっと、名前はなんて?」3年の
徳光部長が彼女に名前を聞くと、女の子は
八重歯を見せて笑って名を言った。
「2年2組の川上凛です」川上凛。昨日かをりが
話題に出した、川上凛。随分と雰囲気が
変わっていた。少し前までは普通の
ショートカットだったのだが、今は横結びを
している。髪を結んだせいか、この前より
髪が長く見える。「川上さんは、入部希望?」

部長がにっこりと笑って訊くと、川上凛は
口角を上げて頷いた。こんなに愛想が良い女の子
だったっけ。友達が噂をしていたのを聞くと、
川上凛は無愛想でただの科学馬鹿だと聞いていたが。
「じゃあ、この入部希望紙に名前を書いてね」
川上凛は渡された鉛筆ですらすらと几帳面な字で
名前を書いた。小さいながらも整った、綺麗な字だ。

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