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銀の星細工師【完結】
作者: 妖狐  (総ページ数: 135ページ)
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*19*

「大丈夫ですか?」
 まだ意識がどこかへ独り歩きしているフレッドへ声をかける。うーんという返事の後、どうにかフレッドは眼を開けた。エリオットは揺さぶるのをやめて何事もなかったように下がる。
「ネア嬢のあの力強いところも素敵だ。きっと照れ隠しであんなことをしたんだろう」
「…………」
 一人で呟く言葉にティアラはフレッドの第一印象を「優しくなじみやすい人」から「ナンパ男でなじみやすい人」へと変えた。
「俺、帰る」
 いきなりキースは宣言し、がテーブルに何枚かチップを置いて背を向ける。ちょっと待ってとティアラが口に出そうとしたとき、はっとフレッドが立ち上がった。
「そうそう、今日は招待状を渡しに来たんだった。キース、王国のパーティーに興味はないかい? よければそちらのお嬢さんも」
 手に持った一通の手紙をキースへと手渡す。キースは嫌そうに受け取りながらも中身を開いた。
『王国パーティー招待状

 12月23日 王国にてパーティーを行う。
 一級星硝子細工師フレッド・オールドの星硝子作品展示および豪華な催しをする。
 是非、足を運んでほしい。
 
 国王デューク・クインハーツ・ザルビッツより』
 綺麗な装飾のついた手紙には短い国王からの文面がつづられていた。だがこの書面は貴族や身分のあるものにしか配られないはずだ。
「ああ、国王にお願いしたら招いて言いよって行ってくれたんだよ」
 まるでティアラの心を読んだようにフレッドは答えた。
「じゃあ、またパーティーで会おう」
 そう言い残すと騎士のエリオットを連れて店を出て行ってしまう。
 キースは静かに手紙をしまうとティアラへ放り投げた。
「お前が行きたいんなら行っていいぞ。俺はいかねえけどな」
 慌てて手紙をキャッチするとキースも外へ出ていく。
 しかしフレッドとはち逢いたくないのか、店の出入り口からじゃなく窓から出て行った。
「私だけ行っても意味ないんじゃ……」
 一人静かになった場所で呟きながら『一級星硝子細工師フレッド・オールドの星硝子作品展示』の文字を思い出して胸を鳴らした。
 国一番と呼ばれる星硝子細工師はどんな星硝子細工をつくるのだろうか。
 自分も見習い級だが細工師なので興味が膨らむ。
「少しだけなら、行ってもいいよね?」
 誰に問うでもなくティアラは手紙を握りしめた。
 キースをパートナーにするという本来の目的は果たせなかったが、きっとここに来ればまた会えるだろう。

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