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*32*
三章 幕間
「たすけ、て。……キース、お兄ちゃん……」
真っ赤に染まった自分の手が、ただ肉の塊《かたまり》を握りしめている。
それは今まで彼女であったもの。けれど今は妙に生暖かくて息がつまるほどの異臭を放っている。
「あ……ああぁ……嘘だろ?」
散らばった洋服の布きれと、血がへばりついたナイフ。
口からは乾いた空気が出し入れされる音しか漏れず、なにも聞こえない。
この世で一番愛おしかった。
ただ守りたくて、自分の命より大切だった。
けど、コレハナンダ?
「あああ……うわあああああああああああああ――!!」
ドス黒くて目も当てられないほど醜い化け物が自分に憑《と》りつき、涙は蒸発して消えた。
俺は自らの手で、ずっと守ると決めた相手を
殺してしまった。
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