完結小説図書館
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*4*
「だからさぁ、教えてってば☆」
その日、私―――雪田勇香は、今日出会ったばかりの男と甘い会話をしていた。
その陰には、このような話がある。
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『殺し屋、始めました』
ポスターを貼った私は今、この瞬間から殺し屋になった。
理由は両親。
感傷心を込めて、後ろを向く。
その方角、約1km先の位置には、お父さんとお母さんがいる。
そこは―――墓場。
働き手が居なくなった私は、すぐにできる金儲けをしなければならない。
両親が死んでしまったのがきっかけで殺し屋を始める、これは少し矛盾しているように思えるけれど、仕方がないんだ。
「なあ、姉ちゃん」
なりたての殺し屋に、いきなり声がかけられた。
「はい」
緊張していたのもあって、声が震える。
「頼もうか、こいつを殺してくれ」
顔写真が差し出されたという事実に気が付き、それを受け取る。
これは―――依頼だ。
「さ、殺害期限は……」
「そうだな、今年中だ」
「では、2915年12月31日まで、ということで……」
「ああ。こいつの名前は幸野岳。報酬は1億な」
期限は長め、報酬は低めなような気がする。
「し、しょっ、承知しました」
著しくつっかえながら、礼をする。
〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜
つまり、隣の男は幸野さん。
今回のターゲットだ。
「だってぇ、いろんなコト話したいんだもん〜」
甘えた声を出せば、結構効くようで。
「あ〜、そうだね……じゃあ、今日は僕の家に泊まっていく?」
出会った初日に家に泊めてくれる、この甘さ。
よかった、チョロくて。
「うん!嬉しいな、ガッくんの部屋をこの目で見られるなんて」
ガッくんとは、幸野さんの事だ。
私は酔っている……ということにしてあるが、13歳、飲めるはずがない。
相手の方も酔っぱらわせておいた。
それを気軽に飲むのも、チョロい。
これはいけそうだと……そう、思った。
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「じゃあ、おやすみ」
「うん、おやすみ」
そう言って、幸野さんは寝室へと入っていった。
もちろん、このまま寝るわけでは無い。
バッグから折り畳みナイフを取り出して、
「待って!」
引き留める。
もちろん相手は振り向いて、
「何?」
その返事をされると、もうすでに、私のナイフは彼の大動脈辺りを貫いていた。
「あ……」
ナイフを引き抜いた時には、幸野さんはすでに亡くなっていた。
「終わらせた、あなたの夢……」
怖くなって、持ち物を持って私は幸野家を飛び出した。