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*5*
「……お前が誘ったんだろう?」
「そりゃ、そうだけどさぁ……なんか、ツヨシ君と一緒にいると、ドキドキしちゃう」
今回のターゲット。
神奈川加奈、12歳。
俺よりも年下の奴を殺すのには、気が引けるのだが。
仕事だから仕方がないし、子供を殺す感覚も味わってみたい。
だから今回は、ナイフで直接攻撃だ。
「大丈夫だって、変なことしねぇよ」
変なことではなく、こいつにとっては「恐ろしいこと」だろう。
「ん〜、ツヨシ君なら、いいかな」
こいつの両親は海外にいるし、家事が忙しくていつも小学校には行っていないらしい。
今日は3月3日。
調理実習がある3月10日には学校に行くようで、それまでは毎日3食ともハンバーグなのだそうだ。
それを教えに、今晩、こいつの家に泊まる。
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「ほら、地雷とかは仕掛けていないから、上がって」
……地雷とか『は』?
確かに、こいつの年齢で武器など持っている奴はいないだろうが。
俺を除いて。
「分かってる、加奈ちゃんはそんなの持ってないよな」
「うん!」
依頼人は、こいつの何を憎んでいるのだろうか?
ものすごく、いい笑顔を向けてくるのだが。
「じゃあ早速、ハンバーグを作るぞっ!」
両腕を振り回しすぎだ。
そして俺たちは、真っ黒焦げのそぼろを作りにかかるのだ。
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次の日の夜。
「……明日も?」
俺は、明日もハンバーグ作りを教えてほしいと頼まれていた。
「うん!全然いいのできないけど、ツヨシ君、面白いんだもん!」
いや……
「それはできない」
やることがある。
「え!?なんで!?」
もちろんこいつは、自分の笑顔を終わらせられることなど知らないだろう。
「……今、こうするから」
言いながら、俺は右腕を前に出していた。
手にはナイフ。
「……っぁ!」
倒れたこいつを一瞬見つめて、俺は、その場を去った。
床には俺の涙が一滴、取り残されていた。