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終わらせよう 【完結】
作者: 独楽林檎 ◆tr.t4dJfuU  (総ページ数: 26ページ)
関連タグ: シリアス・ダーク 長編 殺し 
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10~ 20~

*5*

「……お前が誘ったんだろう?」

「そりゃ、そうだけどさぁ……なんか、ツヨシ君と一緒にいると、ドキドキしちゃう」

 今回のターゲット。

 神奈川加奈、12歳。

 俺よりも年下の奴を殺すのには、気が引けるのだが。

 仕事だから仕方がないし、子供を殺す感覚も味わってみたい。

 だから今回は、ナイフで直接攻撃だ。

「大丈夫だって、変なことしねぇよ」

 変なことではなく、こいつにとっては「恐ろしいこと」だろう。

「ん〜、ツヨシ君なら、いいかな」

 こいつの両親は海外にいるし、家事が忙しくていつも小学校には行っていないらしい。

 今日は3月3日。

 調理実習がある3月10日には学校に行くようで、それまでは毎日3食ともハンバーグなのだそうだ。

 それを教えに、今晩、こいつの家に泊まる。

*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*

「ほら、地雷とかは仕掛けていないから、上がって」

 ……地雷とか『は』?

 確かに、こいつの年齢で武器など持っている奴はいないだろうが。


 俺を除いて。

「分かってる、加奈ちゃんはそんなの持ってないよな」

「うん!」

 依頼人は、こいつの何を憎んでいるのだろうか?

 ものすごく、いい笑顔を向けてくるのだが。

「じゃあ早速、ハンバーグを作るぞっ!」

 両腕を振り回しすぎだ。


 そして俺たちは、真っ黒焦げのそぼろを作りにかかるのだ。

〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜

 次の日の夜。

「……明日も?」

 俺は、明日もハンバーグ作りを教えてほしいと頼まれていた。

「うん!全然いいのできないけど、ツヨシ君、面白いんだもん!」

 いや……

「それはできない」

 やることがある。

「え!?なんで!?」

 もちろんこいつは、自分の笑顔を終わらせられることなど知らないだろう。

「……今、こうするから」

 言いながら、俺は右腕を前に出していた。

 手にはナイフ。

「……っぁ!」

 倒れたこいつを一瞬見つめて、俺は、その場を去った。

 床には俺の涙が一滴、取り残されていた。

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