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*6*
さっきから、震えが止まらない。
なんで?
あの時、すでに一生分泣いたと思ったのに、なんで私、また泣いてるの?
やっと家について、帰れたことへの安心感を抱いた瞬間、立てなくなった。
だからまだ、泣きながらずるずると依頼人のところに向かっている。
あとちょっとで着くから、そろそろ立ち上がって泣き止みたいのに……
足に力が入らない。
涙腺が緩みっぱなし。
どうにもできない、そうわかっているから、このまま前へと進んでいる。
あの場所に着いた。
「あ……」
ポロポロポロっと涙を零しながら見上げると、そこには、あの依頼人がいた。
「ん?その様子だと……もう殺したの?早いな」
何でもないように言われると、もっと傷つくんですけど。
「辛い?」
しゃくりあげながら、がくがくとうなずく。
これ以上に体験したくないほど……辛い。辛い。辛い。
誰かに、助けてほしい……!
「……そうか。なら、君にふたつ名をつけてあげよう。『光の暗殺者』さん」
……ふたつ名?『光の暗殺者』?
欲しくない。
そんなの、要らない。
そんなのもらったら、私は化け物に成り果てる……!
ぶんぶん首を振ると、目から涙が迸ってきた。
「君は正義の暗殺者だ。……じゃあな」
あきらめたように冷たく言うと、彼は去っていった。
置いて行ったバックは……報酬かな。
その後、日が暮れるまで泣いたら……心が軽くなったような気がした。
そして、彼が言っていた言葉を思い出す。
『君は、正義の暗殺者だ』
考えてもすぐには分かるはずがない。
立ち上がろうとして……簡単に立てることに気が付く。
昨日、ガッくんを殺したばかりなのに……。
私はもう、人間ではなくなったのかもしれないな。
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