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終わらせよう 【完結】
作者: 独楽林檎 ◆tr.t4dJfuU  (総ページ数: 26ページ)
関連タグ: シリアス・ダーク 長編 殺し 
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10~ 20~

*6*

 さっきから、震えが止まらない。

 なんで?

 あの時、すでに一生分泣いたと思ったのに、なんで私、また泣いてるの?

 やっと家について、帰れたことへの安心感を抱いた瞬間、立てなくなった。

 だからまだ、泣きながらずるずると依頼人のところに向かっている。

 あとちょっとで着くから、そろそろ立ち上がって泣き止みたいのに……

 足に力が入らない。

 涙腺が緩みっぱなし。

 どうにもできない、そうわかっているから、このまま前へと進んでいる。


 あの場所に着いた。

「あ……」

 ポロポロポロっと涙を零しながら見上げると、そこには、あの依頼人がいた。

「ん?その様子だと……もう殺したの?早いな」

 何でもないように言われると、もっと傷つくんですけど。

「辛い?」

 しゃくりあげながら、がくがくとうなずく。

 これ以上に体験したくないほど……辛い。辛い。辛い。

 誰かに、助けてほしい……!

「……そうか。なら、君にふたつ名をつけてあげよう。『光の暗殺者』さん」

 ……ふたつ名?『光の暗殺者』?


 欲しくない。

 そんなの、要らない。

 そんなのもらったら、私は化け物に成り果てる……!


 ぶんぶん首を振ると、目から涙が迸ってきた。

「君は正義の暗殺者だ。……じゃあな」

 あきらめたように冷たく言うと、彼は去っていった。

 置いて行ったバックは……報酬かな。




 その後、日が暮れるまで泣いたら……心が軽くなったような気がした。

 そして、彼が言っていた言葉を思い出す。

『君は、正義の暗殺者だ』

 考えてもすぐには分かるはずがない。

 立ち上がろうとして……簡単に立てることに気が付く。

 昨日、ガッくんを殺したばかりなのに……。



















 私はもう、人間ではなくなったのかもしれないな。

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