完結小説図書館
<< 小説一覧に戻る
>>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック
>>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック
*7*
現場に残した涙は1滴。
でも、今日、俺が流した涙はその何倍も……何倍も、多い。
止められるような気がしなかった……が、俺が所属する「フェイク」の拠点に入るときには、もう止んでいた。
ドアを開けた先には、いつもの依頼授与局がある。
ここで依頼を受け取り、上からの命令を受ける場所。
いつもの帰る先だ。
ふと、帰ってきた俺に気付いた先輩がこちらに来る。
「……歯を食いしばれ」
言われたとおりにすると、頬に先輩の平手打ちが飛んできた。
バシッ!
「……以後、気をつけろ」
「はい」
傍から聞けば意味の分からないやり取りだっただろう。
頬をはたかれたのは、泣いていたから(正しくは、涙の痕があったから)。
つまり、「気をつけろ」というのは「もう泣くな」という意味だ。
「フェイク」に感情を持ってきてはならない。
そもそも、悲しいなどと思っていたら殺し屋は成り立たない。
……そういう、ものなんだ。
PR