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終わらせよう 【完結】
作者: 独楽林檎 ◆tr.t4dJfuU  (総ページ数: 26ページ)
関連タグ: シリアス・ダーク 長編 殺し 
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10~ 20~

*7*

 現場に残した涙は1滴。

 でも、今日、俺が流した涙はその何倍も……何倍も、多い。

 止められるような気がしなかった……が、俺が所属する「フェイク」の拠点に入るときには、もう止んでいた。

 ドアを開けた先には、いつもの依頼授与局がある。

 ここで依頼を受け取り、上からの命令を受ける場所。

 いつもの帰る先だ。

 ふと、帰ってきた俺に気付いた先輩がこちらに来る。

「……歯を食いしばれ」

 言われたとおりにすると、頬に先輩の平手打ちが飛んできた。


  バシッ!


「……以後、気をつけろ」

「はい」

 傍から聞けば意味の分からないやり取りだっただろう。

 頬をはたかれたのは、泣いていたから(正しくは、涙の痕があったから)。

 つまり、「気をつけろ」というのは「もう泣くな」という意味だ。

 「フェイク」に感情を持ってきてはならない。

 そもそも、悲しいなどと思っていたら殺し屋は成り立たない。

 ……そういう、ものなんだ。

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