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この世界を護るコト【完結】
作者: 実上しわす ◆P8WiDJ.XsE  (総ページ数: 44ページ)
関連タグ: 二次創作 
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・ ミズガルズの名に賭けて ・

「なるほど……」
 オレルスが、納得したようにうなずいた。
 あの一騒動も終わって、ようやく話しに入ったところだった。
「そちらにはそちらの事情があるんだな。分かった、快く調査を進めるよ。だが……きみたちは、樹海の調査も希望しているんだね?」
 グラズヘイムがある方位、樹海というところ――すなわち、世界樹の迷宮がある方位を見比べ、オレルスが問いかける。
「グラズヘイムの調査に必要だ、といっているが……それは確かな情報かね?」
 その返答に、一息吸ってからサイモンは答える。
 意思がこもった目を向け、はっきりと。
「――ミズガルズの名に賭けて」
 その様子が、まるで特撮映画にでてくるヒーローみたいで、真剣で、思わず見入ってしまった。
 ――特撮……映画? また変なことを!
「樹海に立ち入ることなくして、遺跡を知ることはできないでしょう」
「ずいぶんと確信を持った発言だね。……図書館では、あの遺跡の正体など、怪異のことなどで見当がついているのかね?」
 すると、サイモンはにっこりと笑ってこういった。
「いえ、ありません」
「…………そうか。それを調査するための調査隊があるのだな」
「そのとおりです」
「…………ツバサよ、彼らのことをどう思う?」
 唐突に質問を投げられたツバサは、当初困惑した様子を見せる。だが、マイペースで能天気な心で情報を整理し、「信頼できるよ」と答えた。
「俺は、みんなのこと信頼する」
「……そうか……」
 オレルスは樹海がある方位を見つめる。その瞳が、憂い帯びた瞳に似ているような気がした。なんとなく分かる。ツバサはちょっと変だもの。
「ツバサよ、彼らと共に樹海、そして遺跡の調査を続行させてもらってもいいだろうか?」
 ツバサはイエスともノウともいわなかった。そのかわり――。
 コクン
 静かにうなずいて、ほっとした執政院の役員に笑みを返したのだった。

・ これからよろしく ・

《ツバサ》

「執政院の許可もおりたし! これからホントの仲間だな。ツバサ、これからも仲良くやろうぜ!」
 と、少年らしい強くつき始めた肉の手を差し出すアーサー。
 俺はにっこりと笑ったあと、アーサーの手を握った。
「ああ、よろしくな!」
 俺のにこやかな返答に、金髪のアルケミストは「おう!」とうなずく。認めてもらえて嬉しい――そんな表情をして「これから一緒にやっていくんだし、気持ちよくやってけたほうがいいよな!」と肯定の意思を見せた。
 ――その間に、スッと入ってきたのは赤髪のお姉さん……つまり、ラクーナ。
「そうね、仲良くやりましょう」
 その一言が少し怖く聞こえたのは、気のせいではなかったのかもしれない。
 なにせ……酒豪らしいし。
「でも……私たち、まだ会ったばかりだし、お互いのことをあまり知らないでしょ?」
 ラクーナがにやりとした笑いを浮かべる。
「だ、か、ら、あ……」
 ゾクッ
 なにかの寒気、悪寒が俺の背中をつるりと滑ったような気がした。
 もしかして、アレか。ギャグのアレか。泣き上戸とか脱ぎ上戸とかのアレのパターンの人か!?
 つか……怖すぎる。なんなんだ、このパラディン!
「親睦(しんぼく)を深めるためにも、ね、酒場に寄っていかない?」
「嫌だ!」
 即行決断、そして、即行却下。
 返答を聞いて、「えっ」とラクーナが驚く。
「で、でも……冒険者としての仕事も用意されてる場所だし、行ってみて損はないと思うのよ?」
「俺はハイランダーだよ」
「……それに、それに……せっかくエトリアに来たのよ。この街ならではの名物料理とか、みんなは食べてみたくないの?」
 ピクンッ
「名物?」
「そうっ」
「りょーり……」
「そう、そうっ!」
 まるで、タヌキの皮でキツネを狩るような、そんな絶対つられないような言葉にも――俺はつられてしまった。
「…………うん、いいぞ!」
「や、やったあっ!!」
 このやりとりを見て、二人の男子がためいきを吐く。
「またラクーナの暴走が始まるんだな……」 「またあいつの酒好きが……」
 二人は、その手に何度もやられたらしいと知ったのはあとのことだった。

・ 乾杯! ・

「……すごい……賑やかなところね」
「そうだな。すっげえ……」
 金鹿の酒場。そこに俺たちは来ていた。
 レンやツスクルから聞いていた酒場は、やはり熟練冒険者の推薦場所といったような感じがした。
 ガヤガヤ、ザワザワ……うるさくも心地よい夜の風景を思わせる音、
 そして、夜空に浮かぶ星みたいに明るい景色が出迎えてくれたのだ。
 関心を惹かれる風景を見ていると、ラクーナが元気よく椅子に座ることを進めてきた。
 ――やけに元気だな。

「それじゃあ、ギルドの結成を祝って――」
 それぞれが、ビールをなみなみと注がれたジョッキを――そのうち二人は、オレンジジュースがなみなみ注がれたグラスを――虚空に上げる。
 カチンッ! という、ジョッキとグラスがぶつかる音と共に、みんなが祝い特有のセリフを叫んだ。
「かんぱーい!」 「乾杯……」 「「「乾杯!」」」

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