完結小説図書館

<< 小説一覧に戻る

この世界を護るコト【完結】
作者: 実上しわす ◆P8WiDJ.XsE  (総ページ数: 44ページ)
関連タグ: 二次創作 
 >>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック

10~ 20~ 30~ 40~

*18*

「いっくぜ〜!」
 アーサーのかけ声により、地面に淡い黄色の魔法陣が描かれていく。
 複雑な陣の真ん中に、彼は手をついた。ぶつぶつとなにかいっている。なんだろう。
「……リン……酸素……二酸化炭素……しっかりと、はっきりと……」
 リン? 酸素や二酸化炭素は知ってるけど、リンという物質が分からない。
 アルケミストならではの技術を見て、俺は疑問を心の中でいった。
「……ビシャッと落ちろぉ!!」
 見慣れた術式――“雷の術式”が発動していく。雷によってカブトムシのような魔物、はさみカブトは倒れていった。術式が効いたらしい。なーるほど、雷が弱点なんだな。
「……アーサーって、すごいよな」
 感心の息を漏らす。アーサーが「なにがだよ?」と質問してきて、答えた。
「リンとか、酸素とか……」
「当然だろ? いえねえの? 酸素や二酸化炭素は当たり前。水素、ヘリウム、リチウム、ベリリウム、ホウ素、炭素、窒素、リン、ケイ素、フッ素、ネオン、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、硫黄、塩素、アルゴン、カリウム、カルシウム――」
「アーサー、分かった」
「スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲムマニウム、ヒ素、セレン、臭素、クリプトン、ルビジウム、ストロンジウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム――」
「行くぞ、ツバサ。こいつには関わってやれん」
「いや、でもサイモン、熱弁してるし」
「百までいうぞ」
「ロジウム、パラジウム、銀、ガトミウム、インジウム、スズ、アンチモン、テルル、ヨウ素、キセノン、セシウム、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム――」
 どんどん、アーサーのまわりにキラキラマークが散りばめられているような気が……!
 ……乗ろう。行くことに乗ろう。
「…………ああ、分かった」
「行くぞ、アーサー! 遅れるぞ!」
 サイモンが声を上げても、アーサーは、完璧無視――というか聞こえていない。ああ、アーサーのまわりのマークがどんどんハートマークになってきている。
「ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、最後はウンウンオクチウムで、ホルミウムから続くのは――あれっ?」

 ……ちなみに、アーサーが熱弁している間にも戦闘があって、その戦闘での魔物の素材を手に入れて二つ目の依頼が達成できたことは、彼には秘密。

・ 翠緑ノ樹海 ? ・

「――しゃあっ!」
 アーサーが喜びの声を上げた。その両腕は虚空に上げられ、木片を持っている。
「丈夫な木片、ゲット!」
「これで、三つ目の依頼も達成だな」
 サイモンも喜びの声を上げた。ラクーナが笑顔でそれにうなずく。フレドリカは少し不満顔。
「……どうしたんだ?」
「きゃあっ!?」
 フレドリカが始め驚く。だが、すぐに平然とした――少しクールな印象を思い浮かべそうな――顔を作り、俺の質問に答えた。
「……どうしてこんなのしてるのかな、って思って……。‘忘れがたきあの味をもう一度’っていう神秘の水の依頼も、‘ある商店からの頼みごと’っていう、木片を手に入れる依頼も、意味あるの? って……。だって、意味ないと思う! 私たちは、転移装置を見つけたいだけなのに――」

「――それはちがうと思うけどな」

・ ありがとうというキモチ ・

「え……?」
「だって、依頼人の人が喜ぶだろ?」
 ――依頼人の人が――。
 ……うん、そっか。
「そっか――そうだよね!」
 ありがとうというキモチ――。
「それをもらえるだろう?」
 うん、うん――!
「そうだね――!」
 二人で笑い合っているとき、ヒョコッとでてきた女性が一人。
 ……ラクーナだ。
「お・あ・つ・い・わ・ね〜?」
「なっ……」
 ボッと頬が赤くなる。顔も赤面に染まった。
「そんな訳ないっ!!」

・ 漆黒の聖騎士 ・

「これでぜーんぶしゅーりょーだなっ!」
 またアーサーが声を上げる。もちろん、喜びの声をだ。
 それはそうだと思う。だって、全部の依頼が達成できたんだもん。
「ようし、帰ろ――」
 う、といいかけたとき。
 ビュンッ!!
「な――蝶の魔物!?」
 サイモンが「しかも、毒性のか!」と叫ぶ。アーサーが蝶にやられ、さっそく毒にやられていた。ラクーナが状態異常回復薬――‘テリアカβ’をとりだし飲ませた。
 ――甘い香りがした。
 それは突然香った。だが、それは元々この場所に漂っていた香りだったのだ。
 なにしろ、ここは花畑だったのだから。
「この香りにひかれた、という訳か……!」
 ヒュッ
「フレドリカ!?」
 え――?
 振り向くと、蝶が――。
「「危ない!!」」
 ツバサと、知らない声が聞こえた。
 そして――私の意識は閉ざされた。

17 < 18 > 19