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*24*
・ 夜、風呂での事件。 ・
「そういえば、なんだけどさ」
「ん?」といって、俺はアーサーを見やる。
「風呂、どーすんの?」
――ん〜……。
少し考えて、すっくと立つ。
「じゃあ、入るかっ!」
「「おー!!」」
と、決まったことを喜ぶ声を上げていたとき、サイモンは。
「…………どうなっても知らんぞ」
と、一人呟いていたのだった。
ただいま、男ども三人は、真っ裸になっていた。
――訂正。男ども三人は、タオルを下半身に巻いているだけになっていた。
「よーし、入んぞーっ!」
「おーっ」と拳をつくり、そのまま虚空に持っていくアーサー。
「ハア……。本当に、どうなっても知らんぞ」
「どうしてだよ」
キュッ
と、俺がドアノブをひねった音。
「それは――」
いいかけていた途中。
「え――!?」
ここにはいないであろう人物の声が聞こえ、サイモンとアーサーが顔を赤らめた。
まるで熟したリンゴみたいに顔を赤に染め上げた二人は、外へと逃げようとする――いや、した。
だが。
「……どうしてあんたたちが、‘ここ’にいるのよ……!?」
できなかった。
威圧かがった声に、男どもの誰もが石像みたいに動かなくなったのだ。
その声の主は、きっと女性。
そして、少女というよりも年は上の二十歳ぐらいだろう。
つまり――この声の主は。
「「ラ、ラクーナ!?」」
「やはりか……」
サイモンがためいきを吐く。
「な、サイモン知ってたのかよ!?」
「行くときに見なかったか? 混浴の時間だったろう。それをラクーナたちは知らないでいて、今の状況にあたる。そうじゃないか?」
「まじか……!?」といまだに驚愕しながら、アーサーがためいきを吐く。
「きゃあっ!?」
直後、ラクーナとは違う女性の声。
――まさか、フレドリカ!?
「な……な……フレドリカが……男のハダカ……不健全……不健全よ――」
「ラ、ラクーナ――」
おずおずとした態度で、サイモンがなだめようとする。
ゴッ!!
――それを無視し、ラクーナが桶を投げた。
それは、近くにいたサイモンの額に直撃、そして、そのまま彼は倒れ、意識不明の状態になる。
「サイモォンッ!!」
「イ……イヤ……」
「こ……こんの――」
アーサーの悲鳴が聞こえたそのとき。
フレドリカが拒絶反応を示したとき。
ラクーナが拳を震わせ、手で桶を持ったとき。
――カチャッと、全てを動かす時の針が動いたような気がした。
「エッチ大魔王らがぁーっ!!」 「イヤアァーッ!!」
桶。酒樽。ビール瓶。ミカン。ラムネを注ぐ入れ物。その他諸々――。
それらがまるで嵐のように投げられ、俺たちは二人で――サイモンをかつぎながらでもあるが――逃げ回った。
――止めさせなければっ!
「ラクーナ、落ち着いて話を聞いてくれ――」
あまりに近づきすぎたためか、ラクーナとの距離が数ミリぐらいになる。
ラクーナが目を点にさせた。
俺は状況を理解できなくて、彼女がラクーナなのかと視線を動かせる。
頭。
肩。
手。
肌色の、女性特有の丸いム――。
バッシーン!! 「馬鹿ァァーッ!!!」 「ゴフッ!!」
――ネを見ることはできなくて、俺は痛いビンタを受けた。
なにもできなくて倒れていく中、真上にきれいな夜空が見えた。
ああ、空はなんてきれいだろう――。
そんな能天気なことを考えながら、意識がなくなっていくのを感じた。