完結小説図書館
>>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック
*32*
・ カマキリハウスを通り抜けろ ? ・
――うええええっ。
また吐き気がした。
もちろん、全てを刈る影だ。だが、一匹じゃなかった。
「しかも、二匹も!?」
二匹いたんだよ。しかも、一体が稀少個体って――ふざけてるのか。
「どうしよう……。走って通り抜けられるかな……?」
フレドリカが悲しむ顔になる。当然だ。二匹いたら、あのとおり素直には通り抜けられないだろうし。
――でも、俺は馬鹿だもんね。
ダダダダダダダダダダダッ!!
「こーうーげーきーはーっ、絶対の防御ーっ!!」
――突撃だっ!!
「ちょ、ちょって待って、ツバサ……! もうっ!」
「ツバサは走るのが好きなのかしら?」
「まあいいだろう。フレドリカ、ラクーナ、走るぞ!」
「銀の♪ 翼を♪ ひーかーらーせえてー♪ 秋の♪ 夜空を♪ 駆けてーいくー天馬ー♪」
フレドリカは困った顔になりながら。
ラクーナはのんきに笑いながら。
サイモンは黙々と。
アーサーは謎の歌を歌いながら。
俺は再び叫びながら――カマキリへと突進していった。
「ど、どうにか通り抜けられたね……」
「ああ……フレドリカ、大丈夫か……?」
「ツバサ、こそ……」
二つ目の部屋の先は、小部屋だった。
そこで俺たちは息を整えて休憩している。さすがに走りすぎた。疲れた。
「だが、あの先に間違いなく……いる、よな」
だな。サイモンの言葉にうなずく。
「いる、わよねえ……」
そうだよな。ラクーナにもうなずく。
「あの……カマキリ野郎がさ……」
あの、全てを刈る影が、ともいえる。アーサーにもうなずき、ためいきを吐く。
――いるだろう。このパターンできたら絶対にいることだろう。しかも、二匹じゃないだろうな。
――三匹だろうな!
「――でも、行こう」
「……? なにを考えてるんだ? さすがに三匹となれば危ない――」
ここまできたら。
「やるしかないだろ!」
「……まあ、そうか。そのとおりでもあるな」
サイモンがうなずく。
――さあ、行こう。
カマキリハウスを通り抜けるために!
・ カマキリハウスを通り抜けろ ? ・
――はあっ。
やっぱりいた。カマキリが三匹いた。――しかも。
「やっぱり一体だけ稀少個体なんだなあ……」
――稀少個体がだよ!!
「……なあ、やっぱりもう少し休憩しねえか……?」
怖気ついたのか、アーサーが休憩を提案する。
でも、だめだ。
もう行かなくては。
ガッ
「――!?」
アーサーを無理矢理つかみ、俺はダッシュでカマキリへと突進していく。
「や――やめろお〜っ!!」
あはははははっ。突然だけど、俺って実は大家族なんだよねえ。
うん、だから暴れる七歳児でも慣れたものなのさ。あ、十五歳でもそうだよ? 二十五歳のダメ大人手懐けてたし。またたびで。あの人またたび好きなんだよな。
「うわわわわわわわわっ」
「あははははははははっ」
「「「…………」」」
三人が黙る。
サイモンが驚いた。目を点にしている。
ラクーナも同様だった。
フレドリカは唖然とした顔だった。というか、影で顔が見えなかったけど。
あとはやっぱり――突進だった。
――金髪アルケミストに睨まれていたけれど、俺は分かってて無視した。