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この世界を護るコト【完結】
作者: 実上しわす ◆P8WiDJ.XsE  (総ページ数: 44ページ)
関連タグ: 二次創作 
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*32*


・ カマキリハウスを通り抜けろ ? ・

 ――うええええっ。
 また吐き気がした。
 もちろん、全てを刈る影だ。だが、一匹じゃなかった。
「しかも、二匹も!?」
 二匹いたんだよ。しかも、一体が稀少個体って――ふざけてるのか。
「どうしよう……。走って通り抜けられるかな……?」
 フレドリカが悲しむ顔になる。当然だ。二匹いたら、あのとおり素直には通り抜けられないだろうし。
 ――でも、俺は馬鹿だもんね。
 ダダダダダダダダダダダッ!!
「こーうーげーきーはーっ、絶対の防御ーっ!!」
 ――突撃だっ!!
「ちょ、ちょって待って、ツバサ……! もうっ!」
「ツバサは走るのが好きなのかしら?」
「まあいいだろう。フレドリカ、ラクーナ、走るぞ!」
「銀の♪ 翼を♪ ひーかーらーせえてー♪ 秋の♪ 夜空を♪ 駆けてーいくー天馬ー♪」
 フレドリカは困った顔になりながら。
 ラクーナはのんきに笑いながら。
 サイモンは黙々と。
 アーサーは謎の歌を歌いながら。
 俺は再び叫びながら――カマキリへと突進していった。

「ど、どうにか通り抜けられたね……」
「ああ……フレドリカ、大丈夫か……?」
「ツバサ、こそ……」
 二つ目の部屋の先は、小部屋だった。
 そこで俺たちは息を整えて休憩している。さすがに走りすぎた。疲れた。
「だが、あの先に間違いなく……いる、よな」
 だな。サイモンの言葉にうなずく。
「いる、わよねえ……」
 そうだよな。ラクーナにもうなずく。
「あの……カマキリ野郎がさ……」
 あの、全てを刈る影が、ともいえる。アーサーにもうなずき、ためいきを吐く。
 ――いるだろう。このパターンできたら絶対にいることだろう。しかも、二匹じゃないだろうな。
 ――三匹だろうな!
「――でも、行こう」
「……? なにを考えてるんだ? さすがに三匹となれば危ない――」
 ここまできたら。
「やるしかないだろ!」
「……まあ、そうか。そのとおりでもあるな」
 サイモンがうなずく。
 ――さあ、行こう。
 カマキリハウスを通り抜けるために!

・ カマキリハウスを通り抜けろ ? ・

 ――はあっ。
 やっぱりいた。カマキリが三匹いた。――しかも。
「やっぱり一体だけ稀少個体なんだなあ……」
 ――稀少個体がだよ!!
「……なあ、やっぱりもう少し休憩しねえか……?」
 怖気ついたのか、アーサーが休憩を提案する。
 でも、だめだ。
 もう行かなくては。
 ガッ
「――!?」
 アーサーを無理矢理つかみ、俺はダッシュでカマキリへと突進していく。
「や――やめろお〜っ!!」
 あはははははっ。突然だけど、俺って実は大家族なんだよねえ。
 うん、だから暴れる七歳児でも慣れたものなのさ。あ、十五歳でもそうだよ? 二十五歳のダメ大人手懐けてたし。またたびで。あの人またたび好きなんだよな。
「うわわわわわわわわっ」
「あははははははははっ」
「「「…………」」」
 三人が黙る。
 サイモンが驚いた。目を点にしている。
 ラクーナも同様だった。
 フレドリカは唖然とした顔だった。というか、影で顔が見えなかったけど。
 あとはやっぱり――突進だった。
 ――金髪アルケミストに睨まれていたけれど、俺は分かってて無視した。

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