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*36*
・ 雪狼の王者 ? ・
――ウオォ〜ン!
「え――?」
ウオォ〜ン! ウオオォ〜ン! ウォ〜ン!
「嘘――こんなに狼がいるの!?」
翠緑ノ樹海、四階――そこに足を踏み入れた直後、俺たちを威嚇するように響いたのは……鳴き声。
もちろん、狼たちの鳴き声だ。
それはやがて森の木の葉を震わせられるほどに大きくなっていき――静まった。
「……注意して、進みましょう……」
ラクーナが警戒心を解かないままいった。
「いつ狼に襲われるのかもわから――きゃあっ!?」
――警戒心を解かなくても、注意力は散漫するようで。
ラクーナの足が、穴の中にずっぼりと入ってしまった。
「……見かけ通りとろいな、お前って」
じと目で見つめるアーサーに、ラクーナが叫び返す。
「鎧を着てるんだからしょうがないでしょ!?」
この話のあとに笑い声が響いて、狼がびっくりしたと聞くが、それは果たして本当だったのだろうか。
――本当の気もするけれど。
・ 雪狼の王者 ? ・
――ぴりぴり、した。
今いるところは、スノードリフトの住処と思われる場所の手前――天然の扉ができているところ。
また、ぴりぴりする。――全身が武者震いするかのような、そんな感覚。それが、ぴりぴりしたということだった。
つまり――ここが、スノードリフトが住む場所への入り口なのだろう。地図でもなんとなく分かっていたが、自覚するとやはり怖くなってくる。
でも、行かなきゃいけない。
「――行くぞ!」
俺たちは進んでいく。
ハピネススターのみんなの仇を――。
やられていったギルドの仇を――。
それ以前に。
フレドリカの記憶を取り戻すために――。
――鳴き声が響いた。
スノードリフトの鳴き声を耳にし、みんなが固まる。
それは次第に大きくなっていき――最高潮のところで、ようやく奴が姿を現した。
確かに、雪色と水色が分かれた狼だった。
水色の大きな尻尾、胴体は白色。手足は水色。きらきらと光る瞳は、黄金にぎらついている。角も生えていて――それは黒色だった。
雪狼の王者。
奴は、また咆哮を上げた。
すると、なんとスノードリフトを守るかのように、四匹の狼F.O.E――‘スノーウルフ’がやってきたではないか。
「……これが、スノードリフトか」
サイモンの言葉に、フレドリカがうなずく。
「行きましょう――こんなところでモタモタしてられない!」
――そのとおりだ!
「行こう、みんな! 先に進んでやるんだ!」
王者が再び咆哮を上げる。
それは轟(とどろ)いていく。
森へと。
森へと。
森へと。
――森へと。
覇気が周囲を渦巻く中、俺たちは王者のもとへと駆け出していった。
――始まった。王者との戦いが――。