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この世界を護るコト【完結】
作者: 実上しわす ◆P8WiDJ.XsE  (総ページ数: 44ページ)
関連タグ: 二次創作 
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*35*


・ 安らかなるように ・

「……安らかなるように……」
 ――ん?
「…………安らか……に」
 ――もしかして!
「レン! ツスクル!」
 ――ここは、翠緑ノ樹海、三階。
 細かくいうと、エルサとイルアナが死んでしまった場所だ。
 ここを通ることになるために歩いていたのだが、俺がレンとツスクルを見つけたのだ。
 ――レンたちは、祈りをささげていた。
 アーメンっていうのじゃない。ただの祈りだ。
 まぶたを閉じて両手を組む祈り。
 エルサたちが死んでしまった場所には、きれいな墓が作られていた。
「……ああ、きみたちか。ギルドを組んだのだな。……今、ハピネススターの一員が死んでいったという場所に祈りをささげていたところだ」
 「エルサとイルアナという双子だったそうだな」とレン。その質問に俺はうなずく。
「……かわいそう。でも、命はもう取り戻せない……。人は、哀れむことしかできない……」
 「または……」とツクスル。
「……怒りを覚えて、原因の元を倒したりという暴行しか……」
「人間は弱い生き物だからな。そうするのも自然だろう」
「ええ……だから、執政院はミッションを発動した……」
 ツスクルが、再び祈りをささげる。
 「ごめんね……こんなことしかできなくて」といっている様子が見れた。
「……私たちが、必ず倒すからね」
 フレドリカが呟く。
 
 うん……ありがとうなの、フレドリカ……。

「……!? 今、エルサの声が――」

 ありがとう……フィカルナ、レン、ツスクル――。

「……イルアナの声も!」
「ああ――」
 素敵なことだな。
 俺は虚空に向けて、思いを口にした。

・ 雪狼の王者 ? ・

 ――叫び声が上がった。
 それは、兵士のものだった。
 そして、同時に狼のものでもあった。
 リン……
 軽やかで涼しい鈴の音。だが、冷たい音。
 リィン……
 その音色を聞いて、兵士が声を上げたのだ。
 俺は立ちすくむ。みんな、同様だと思った。
「……ファル……ミラデ……」
「アーサー?」
 アーサーだけは、不可思議な音律を口にする。
 そして、その数秒後。レンの背後にいた少女が――。
「ファルミラデ……ラファシレカ……アンダリャロ……リカ……」
 ――アーサーの言葉と同じ言葉を口にしたのだ。
「なっ……!?」
「「空の下……凍りつく……獲物を食らう……」」
 アルケミストの少年の顔色が悪くなっていく中、ツスクルは翻訳した言葉を口にしていく。
 もちろん、アーサーもだった。
 ――アーサー、カースメーカーの素質あんのかな。
 思った直後――狼の口から血がドバッと流れ出てきた。
「――!」
 フレドリカの表情が強張る。
 ――当然、だな。あんな気持ち悪いのみたら。
「……アーサー……」
 サイモンは曇った表情をうかべる。
「……これで、いいかしら」
 「ふう」と安心のためいきを吐くツスクルに、アーサーが質問する。
「なあ、さっきのあれって……」
「……呪言(じゅげん)のこと? 特別なことはしてない。……それよりも、狼は耳や目はたいしてよくないけど、血の臭いにだけは敏感よ。貴方たちも……気をつけて」
 レンが兵士に駆け寄る。
 ツスクルもレンへと寄り、ツバサたちに向かって光る雫を振りまいた。
 すると、体力や怪我が回復していくではないか。
「…………すっげえ」
 アーサーが感心の声を漏らす。うん、ホントにすっごい。
「……ファルミラデ……空の下――」
 直後、少年は地面に崩れ落ちてしまう。
 サイモンが抱きかかえた。
 「サンキュー」とアーサー。
「よかった」
 それを聞き、サイモンが安堵の声を上げる。
「ああっ!」
「……兵士が、心配」
 ツスクルが呟いた。レンが兵士を手当てしている様子を遠巻きにして見ていながら、また呟く。
「……だから、先に行って。あとで、追いかける……」
 ――嘘だな。
「試すなら、試すっていえ! 俺たちはカマキリに向かってダッシュしたパーティだ、簡単には死なないさ!」
「おうよ!」
 アーサーも続いて声を上げた。
「俺たちだけで戦えるっつの!」
 ツスクルが微笑む。
「……ええ、そうね」
 ――がんばって、フィカルナ。
 そうカースメーカーの少女はいった。
 俺たちは先に進み、安易に見つかった四階への階段を下りていく。
 ――目的を達成するために。

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