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罪人の娘 「end」
作者: 水沢麻莉衣  (総ページ数: 27ページ)
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10~ 20~

*13*

〜story2 明日香〜

ルフェリ街の裏路地には小さな喫茶店があった。
むかし、人混みが、苦手なパパがティータイムしに連れてきてくれたものだ。
ここのココアとケーキは絶品で、パパはもう一つ、美味しいあんみつのお店があると言っていた。
そこには連れては行ってくれなかった。
パパの秘密の場所。
パパは具合が良くないので、「お外の世界」にはあまり出られないのだ。

「で?いいのかよ?もう6時過ぎてるぜ?」

彼氏である、久木はあすに言う。
もういいでしょ。
私、18だよ?もう、おとなでしょ。一々連絡なんて入れないよ。恥ずかしい。
他の子はしてないし。

「いいの」

「親父さん心配すんじゃね?」

「勝手に心配してって感じ。もういいでしょ?めんどくさいもーん」

「まぁオレはいいけどさ」

ほんとならルフェリ族の誇り高き姫は彼氏なんてそんなの作っちゃだめって知ってるけどさ。
でもいいじゃん。
私もこーゆーのしてみたいんだよ?
おとな!!ね!?

すこしはパパが心配してるかもと思うけどでも。
きっと大丈夫。
パパそんな怒んないし。怖くないし。
そうゆう問題ではないか。

「まだ6時でしょー?パパ過保護すぎなの」

「心配してるのーとか言ってたくせに笑」

ちょっ!?
せっかく人が自由に楽しんでるのに酷い奴。
まったく。

私は喉が渇いたので、レモン水を口にいれた。
カラカラの喉を潤してくれた。
カラカラの植物の私にパパが水をくれているように。
ちがう。
私がパパに水をくれてるんだ。
そうか。
助けてるのはーーー私よ。

「姫様でよろしいですね?」

ドクン
これほど緊迫感のある声は久しぶりだ。
心臓を撫でるかのように緊迫感のある声だ。
私はこの声の主を知っている。
決してパパではない。

ーールフェリ族の諜報部隊だ。

間違い無いだろう。
門限にもなり帰ってこない娘を探しているのだ。
パパではない。
ルフェリの頂点にたつ男。
水沢秋雨。(あきさ)
パパの父親。
パパに何一つ似ていない、水沢(ルフェリ)医療大学付属病院の前院長にして、いまの大学教授である。
この人はとんでもない。
自分のためならなんでもする。そのためなら容赦もない。
そんなとんでもない男の下に付く諜報部隊。
お姉ちゃんの属する特務部隊とは訳が違う位、緊迫感のある部隊。

ーーーー怖い。

一瞬にしてなにをされるのか不安になってしまう。
パパ、たすけて。
自分からパパを捨てるようにした癖に助けをもとめる。
最低なんて言ってられない。

「帰りますよ。お父様も心配して居られます。」

「は、はいっ・・・・・」

「おい、明日香?」

「帰るから!」

久木になにも説明せず、店を飛び出す。
諜報部隊まで来るなんて。
どこまで私はーーー。
監視されすぎだ。
ストーカー状態と言っていい。

屋敷に戻るとパパはいまにも泣きそうな顔をわたしにみせた。
ーー罪悪感でいっぱいになった。

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