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君と紡ぐ二人の時間
作者: 豆狸 チェリー  (総ページ数: 17ページ)
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10~

*8*

第 2 章 ( 後編 )
〜運命〜

友達とは、互いに心を許しあう対等な存在のことをいう。

それは、一瞬の気のゆるみが招いた事故である。
いつ俺は、こいつなんかとそんな関係になりたいと思った?
なぜ、こいつのことを受け入れたんだ?

だけど一つだけ言えることがある。

俺は、こいつに興味がある。 それは、事実だ。
だが、俺の中にもっと別の感情があるような気がする。
しかし、これまで興味を抱いた人間は、なにもこいつだけではない。

人生を捨て、勝手に寿命を縮ませた大馬鹿人間。
愛する人間のために、自分の命を差し出した人間。
他者を殺し、自分も死んだ人間。



そんな奴らは山ほどいた。
すべてくだらなかった。


しかし、こいつは何かが決定的に違った。

ああ、そうかそうか、俺はそこが気に入ったんだ。
きっと、そうだ。

「 あのっ 凍夜さん! 何か考え事ですか?」


「 うわっ! いきなりくるな!菊一 柊。」

悩みの種はこのアホな顔した人間、菊一 柊。
満面の笑みでこちらをのぞき込むようにして俺を見ている。

てか、近すぎ。

「 そんなに近寄るんだったら、頭突き、またすんぞ。」

「 やっ 嫌ですよ〜。」

なんでか俺は、今こいつと友達なんだ。
俺の中にある別の感情。こいつといれば、何かがわかるのだろうか。


「 冷たいんですね、凍夜さんは・・・」

「 好きなだけ言ってろ。」

「 ぶ〜ぶ〜!!!!!」

「 お前は、豚か!!」

呆れた俺はもう一度リストに目を通してみた。

しかし、そこには・・・


「 なっ・・・」

何も言えなかった。


言葉が詰まって、喉がおかしくなりそうだった。

最後の一行をよく見てみると、そこには・・・



余命 3ヶ月。

こいつあと3ヶ月も生きんのか!?

おいおいおいおい、確か先輩は、

(その仕事終わるまで、他の仕事禁止ね〜。)


こいつを3ヶ月も見張んなきゃいけねーのか!?



ほんともう、さいあ・・・

「 凍夜さんが、いてくれて、私最高に嬉しいです。」


「 はっ!? 何言って・・・」

そのあまりにも純粋な笑顔に、俺は目が離せなかった。
いいや、正確には離したくなかった。

それどころか、もっとこいつの笑顔が見た・・・

「 あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

何考えてんだよ、俺! しっかりしろ!
俺様は、凍夜だ! 人間なんて、暇人な神が創った、ただの道具だ!
どうしたんだよ! 俺!!
それになんか、顔が熱い。
まさか、あの特別な薬に副作用かなんかあんのか?


「 凍夜さん、顔真っ赤ですよ。平気ですか?」

ピトッ

「 おいっ!! 何してる!?」

何が起きたのか、俺にはわからなかった。

目の前にあるのは・・・

「 なんか熱いですよ!? 熱あるんじゃ・・・」

菊一 柊の 、顔・・・だった。


「 ねっ 熱なんぞない! 決してない! 離れろ!」

俺は急いで離れた。
この間、僅か1秒である。


「 もういい! 今日は帰る!!」

もう何も考えらなかった。 とにかくこの場から、空気から、
逃げたかった。

「 寂しいです。 もういなくなっちゃうんですか?」

一瞬、ためらってしまった。
まるで、子犬のように目をうるわせているその表情には何とも
言えなかった。



「 帰る! 帰るカエルカエルカエル!!」

「 蛙?」


「 もういい・・・」

俺が背を向けたその時・・・

「 また、来てくださいね! 約束ですよ〜。」

「 おうっ・・・」

もう二度とごめんだと思っていた自分がどこかに消えていた。


その気持ちとは裏腹に、心は素直だった。
早く脈うつ心臓、息がしずらい。苦しい
俺は、もっと一緒に・・・


「 違う! 断じてない!」

鮮やかな夕焼けに空が染まりかけていた頃、

俺は一人、その気持ちにそっと・・・


蓋を・・した・・・。





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