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第 2 章 ( 後編 )
〜運命〜
友達とは、互いに心を許しあう対等な存在のことをいう。
それは、一瞬の気のゆるみが招いた事故である。
いつ俺は、こいつなんかとそんな関係になりたいと思った?
なぜ、こいつのことを受け入れたんだ?
だけど一つだけ言えることがある。
俺は、こいつに興味がある。 それは、事実だ。
だが、俺の中にもっと別の感情があるような気がする。
しかし、これまで興味を抱いた人間は、なにもこいつだけではない。
人生を捨て、勝手に寿命を縮ませた大馬鹿人間。
愛する人間のために、自分の命を差し出した人間。
他者を殺し、自分も死んだ人間。
そんな奴らは山ほどいた。
すべてくだらなかった。
しかし、こいつは何かが決定的に違った。
ああ、そうかそうか、俺はそこが気に入ったんだ。
きっと、そうだ。
「 あのっ 凍夜さん! 何か考え事ですか?」
「 うわっ! いきなりくるな!菊一 柊。」
悩みの種はこのアホな顔した人間、菊一 柊。
満面の笑みでこちらをのぞき込むようにして俺を見ている。
てか、近すぎ。
「 そんなに近寄るんだったら、頭突き、またすんぞ。」
「 やっ 嫌ですよ〜。」
なんでか俺は、今こいつと友達なんだ。
俺の中にある別の感情。こいつといれば、何かがわかるのだろうか。
「 冷たいんですね、凍夜さんは・・・」
「 好きなだけ言ってろ。」
「 ぶ〜ぶ〜!!!!!」
「 お前は、豚か!!」
呆れた俺はもう一度リストに目を通してみた。
しかし、そこには・・・
「 なっ・・・」
何も言えなかった。
言葉が詰まって、喉がおかしくなりそうだった。
最後の一行をよく見てみると、そこには・・・
余命 3ヶ月。
こいつあと3ヶ月も生きんのか!?
おいおいおいおい、確か先輩は、
(その仕事終わるまで、他の仕事禁止ね〜。)
こいつを3ヶ月も見張んなきゃいけねーのか!?
ほんともう、さいあ・・・
「 凍夜さんが、いてくれて、私最高に嬉しいです。」
「 はっ!? 何言って・・・」
そのあまりにも純粋な笑顔に、俺は目が離せなかった。
いいや、正確には離したくなかった。
それどころか、もっとこいつの笑顔が見た・・・
「 あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
何考えてんだよ、俺! しっかりしろ!
俺様は、凍夜だ! 人間なんて、暇人な神が創った、ただの道具だ!
どうしたんだよ! 俺!!
それになんか、顔が熱い。
まさか、あの特別な薬に副作用かなんかあんのか?
「 凍夜さん、顔真っ赤ですよ。平気ですか?」
ピトッ
「 おいっ!! 何してる!?」
何が起きたのか、俺にはわからなかった。
目の前にあるのは・・・
「 なんか熱いですよ!? 熱あるんじゃ・・・」
菊一 柊の 、顔・・・だった。
「 ねっ 熱なんぞない! 決してない! 離れろ!」
俺は急いで離れた。
この間、僅か1秒である。
「 もういい! 今日は帰る!!」
もう何も考えらなかった。 とにかくこの場から、空気から、
逃げたかった。
「 寂しいです。 もういなくなっちゃうんですか?」
一瞬、ためらってしまった。
まるで、子犬のように目をうるわせているその表情には何とも
言えなかった。
「 帰る! 帰るカエルカエルカエル!!」
「 蛙?」
「 もういい・・・」
俺が背を向けたその時・・・
「 また、来てくださいね! 約束ですよ〜。」
「 おうっ・・・」
もう二度とごめんだと思っていた自分がどこかに消えていた。
その気持ちとは裏腹に、心は素直だった。
早く脈うつ心臓、息がしずらい。苦しい
俺は、もっと一緒に・・・
「 違う! 断じてない!」
鮮やかな夕焼けに空が染まりかけていた頃、
俺は一人、その気持ちにそっと・・・
蓋を・・した・・・。