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*6*
第三話
気が付くとカイトは、どんどん未来の事が好きになっていった。
風になびく空色の髪も、控えめな笑顔も、相手を一番に思う優しい性格も。
そして、出会いから半年後。
「結城さん、今日はありがとう」
カイトが未来に勇気を振り絞って誘った、ショッピングモールデートの帰りだった。
今は公園のベンチで二人、駄弁ることに決定した所だ。
「ううん、私こそ。誘ってくれてありがとう」
そう言って未来はニコッと笑った。
「でも、最近テレビとかでよく見かけてるし、忙しいの?」
「少し。明後日も音楽番組に出るの、ありがたいことに」
未来は今、人気急上昇中のシンガーソングライターだった。
(このまま結城さんが、遠い存在になってしまったら…嫌だ)
カイトは、前々から悩んでいたことに、覚悟を決めた。
「結城さん…、俺…」
「何?有馬くん」
カイトはベンチから立ち、未来の前に突っ立った。
「俺、貴方の事が好きです!俺と、もし良ければ、付き合ってくれませんか!」
カイトは、バッと頭を下げ、右手を差し出した。
すると、右手に暖かい、柔らかい感触を感じた。
「え…」
カイトがおそるおそる顔を上げると、カイトの手に両手を包み込ませ、満面の笑みを魅せた未来がいた。
「こんな私で良ければ、よろしくお願いします」
「ほ、本当!?」
カイトが不安と嬉しさの境目で聞くと、未来はクスッと笑った。
「嘘なんてつかないよ」
この時カイトには、あんな事を考える余裕はなかった。
この幸せは、そう長くは続かない事を。
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