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青や水色で構成されたこの世界は、私にとっては退屈すぎる。
まるで劇場のようだ。他の人が作り上げる世界をただ席に座って見ているような気分。
壁のような、はたまた湖のような、大きな鏡。そこには緑の大地、青く光る空、そしてたくさんの人々が映りこんだ。
ある者は無くしたものを取り戻そうと風を纏い、ある者は天性に気付かぬまま音を紡ぎ、ある者は運命から目を背けながら花と舞う。
ある者は二人でひとつ、海と大地の加護を受け、ある者は過去の願いのために氷結の心を持ち、ある者は壊れた心と閃光を放つ。
ある者は雷鳴の如く、悪の化身の中を駆け抜ける。
私はそこに足を伸ばす。
爪先は床を突き抜ける。どうやらここからなら、退屈な世界から出ることが出来そうだ。
折角だから、私もこの劇の役者になってみよう。この身体で出来るのかは分からない。
でもいつもはここでずっと見ているだけだ。
少しスリルが欲しい時期だ。
銀髪の青年は私に呼びかける。
「どこへ行かれるのですか?」
「お芝居してくるのよ」
私は、鏡の中に身を投じた。
雲を突き抜けて、大地へと降りていった。
その先には、一人の子供がいた。
行き倒れの少年を、真っ直ぐな瞳で見ていた――――
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