完結小説図書館
>>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック
*51*
ライデンside
「私に近付くなぁぁぁぁぁぁぁッッ!!」
金切り声をあげたアヤは空中に高速で高く浮き上がり、赤い菱形の形をした結晶で自分のまわりを囲った。
『いい?あれは彼女が用意した結界だよ。あの結晶を壊さないと、彼女にダメージを与えることはできないからね』
「わかった」
イタルータが素早く説明し、セイシュンもそれに応答する。
「叩いて壊そう」
ヤジータの鉈に、鋭く速い風が宿る。
俺達が魔武器を解放した瞬間、地響きが始まった。
『3人とも、避けて!』
アイリの声が響き、俺達は自分達がいた位置から遠ざかる。
その直後、さっきまで立っていた場所から巨大な蔦が突き上げた。
「……なるほど」
『この場所は完全に奴のフィールドだ。気を抜くなよ』
フィギールの声もする。
「今ならいける、叩き込め!!」
ヤジータが一足先に前へ走り出し、俺とセイシュンは後に続く。
「アイリ、フィギール、風神鉈。頼んだぞ!」
『魔力調整は完璧だよ』
『任せろ。威力も充分だ。』
自分の頭上へと鉈を振り上げたヤジータは、そこに竜巻を宿らせる。今までのものより遥かに大きく速く、そして圧力を感じた。
「……3人だとこんなに違うんだな……俺は……仲間を信じてよかった」
そこへ巨大な蔦が襲いかかる。
「ヤジータ、避けろ!」
ヤジータはセイシュンの声などまるで聞こえていないかのように目を閉じる。
無数の刃と棘を持った蔦がヤジータを切り刻もうとした瞬間、
「風神鉈・トルネード!!」
竜巻が蔦、そして地面から引き出された蔦の本体であろう巨大な球根を逆に切り刻んだ。
瞬時に武器を失ったアヤは、結晶の中で目を見開いている。
「くっ……ハァッッ!!」
今度は四方の壁から、あの食人植物が持っていた鎌が大量に壁を壊して現れた。
「……全く、ライデン。アヤのことは君に任せることにするよ」
セイシュンの呟きと共に、辺りに冷たい風が吹いた。
『狙うならあの一点だよ』
「わかってる。ちゃんとサポートしてね」
セイシュンは矛を構え、ある場所目掛けて一目散に走り出した。
その後ろを無数の鎌が追う。
「ツバキ……僕が無力なせいで、辛い思いをさせてしまってごめん。これからは……強くなるから」
セイシュンは足を止め振り返る。無数の鎌はセイシュンへと襲いかかる。
「スピア・フローズン!!」
声と共にセイシュンは矛を自分の足元に突き刺す。
矛からは次々と氷が生まれ、やがて全ての鎌の尖端を完全に凍らせた。
その氷は鎌や、それを繋ぐ根まで広がり、最終的には鎌全体が凍りついた。
辺りに冷気が広がる。
「ふざけるのも……いい加減にしなさいよ!!」
アヤの声と同時に地面から蔦が飛び出し、驚くべき速さでセイシュンとヤジータを薙ぎ飛ばした。
「ぐッ!」
「こんなもんじゃ終わらないわ……私はヒートなんですから!!」
次々に飛び出す無数の武器、それらが二人に襲いかかったとき、二人の前には白く輝くシェルターのようなものが現れた。
戦闘音のせいでわからなかったが、耳を澄ませると、アイリの美しい歌声が聞こえた。
「このッッ……!」
アヤは力ずくでシェルターを壊そうと、蔦や鎌を何度もシェルターにぶつける。
そのたびに衝撃音が響く。
『ま、まずいです……このままじゃ……!』
「……いや、大丈夫だ。もう勝ったも同然だ」
アイリとヤジータのやり取りを背中に受ける。
……そう、何もかもうまくいった。
「…………ッッ!?」
アヤは目を見開いた。
彼女のまわりには、細い炎の結界が作られていた。
「何これ……いつの間に!?」
「さっきの攻撃の最中だぞ……冷静さを欠けば粗めに出る」
俺はセイシュンが凍らせた鎌を登り、彼女を見下ろす体勢になっている。
「俺の魔力……注ぎ込んでやる」
サーベルは激しい電撃を宿す。
落雷をそのまま受けたかのように輝くサーベルは、今までのものとは全く違った。
重く大きいサーベルは、使い慣れていない重さにも関わらず俺の手に馴染み、振ることも容易だった。
「サーベル・ライトニング!!」
刀身の形をした電撃が結晶を襲った。
「ぐ……こ、こんなもの……!!」
アヤも魔力で必死に結界を保持しようと抵抗する。
「……うぉおおおおッッ!!」
俺は全力でサーベルを押し込み、そのうち何かが壊れるような手応えを感じた。
赤い結晶は砕け散った。
「な……なん、ですって……!?」
アヤは魔力も残っていないような体の動かしかたで、なんとか空中に静止した。
「後はツバキの……解放だ」
セイシュンの声が聞こえ、俺は頷く。
「そ、そんな……こんなガキどもに……この私が……!!」
「ネオン……お前の力……借りるぞ」
サーベルを一振りする。その刀身に宿るのは雷と炎の融合体、青く美しい光を放った炎だ。
「これで全て……終わらせるんだ……!!」
「嘘、でしょ……こ、こんな……!」
「…………ハァッッ!!」
サーベルをアヤに向かって振り降ろした。