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作者: アルセ (総ページ数: 109ページ)
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*13*
○現在
タイチ「(思い出して)そりゃ言ったかもしれないけどよ・・・」
ダイチ「これでも遠慮為い為い走ったんすよ。全く、兄貴は金と美女のことになるとウサギよりも素早く動けるのに、他のことになるとカメよりも鈍臭くなるんだから」
タイチ「(引きつった笑顔で)ダイチ君、ダイチ君。ちょっと、お耳をか・し・て」
と、ダイチの耳朶を摘む。
タイチ「(大声で)バカヤロー・・・!!」
と、怒鳴る。
ダイチ「人の耳元で、何て声出すの?!鼓膜が破れるかと思った」
タイチ「(声を張り上げ)シャーラップっ!オレは鼠みたいにチョロチョロ動き回らない質なの!だけどな、決める時はビシッと決める!見ろ、このスーツケースを。パーフェクトに・・・」
ダイチ「空っぽ・・・」
タイチ「え?」
ダイチ「何も入ってない・・・」
タイチ「ウソ?!」
と、スーツケースを調べる。
ダイチ「(呆れて)パーフェクトねぇ・・・」
タイチ「(ばつが悪そうに)う、うるせぇ!もっと、良く探せば何かが・・・(!)ほら、あった!内ポケットの中に何かある!」
と、紙に包まれたモノを取り出し・・・包みを開ける・・・が、入っていたのはセーター1枚だった・・・。
タイチ「・・・何コレ?・・・」
ダイチ「セーター」
タイチ「(涙目で)―んなの見りゃわかるわーっ!」
ダイチ「怒鳴らなくたっていいでしょ?!」
タイチ「うるさいっ!(くぅー)カツオブシ削りてぇー・・・!」
ダイチ「出た、兄貴の数あるボキャブラリーの内の一つ『カツオブシ削りたい』・・・お仕事や恋愛に失敗したりすると必ず口にするお決まりのセリフ・・・が」
タイチ「おい、ちょっと待て。(開き直って)誰が失敗したって?ちゃんと戦利品はゲットしたんだから今日はプチパーフェクトだ!」
ダイチ「本当、ビシッと決めてくれましたね。久し振りのお仕事が空のスーツケースと何処かのバーゲンセールで売っているようなチープな女物のセーターが1枚・・・」
タイチ「シャーラップ!オレはちょうどセーターが欲しいなと思っていたところなんだよ!コイツさえあれば全てが万事OK!・・・な、そう思わないか?ダイチ・・・」
と、振り返る・・・が、そこにいたのはダイチではなく・・・(何故か代わりに)強面のオバチャンが立っていた。
タイチ「・・・」
オバチャン「(強く睨みつけ)・・・」
しばし、沈黙が流れる・・・・・・。
突然、訳もなく笑い出すタイチ・・・に、釣られて笑うオバチャン・・・の隙をついて逃げようとするタイチ・・・の肩を掴むオバチャン。
そして、閑静な住宅街に乾いた音が天高らかに響き渡ったことは言うまでもなかった・・・・・・。
フンッと立ち去るオバチャン・・・の強烈なビンタを食らい、気を失っているタイチ。
ダイチ「(電柱の陰から出て来て)―ったく、本当素直じゃないんだから・・・ご愁傷様です」
と、合掌する。