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ヤシノキ町物語 第一話
作者: アルセ  (総ページ数: 109ページ)
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*25*

○現在・ヨットハーバー

タイチ「いいから、チャンス到来だってこと。一気に片を付けるぞ。急げ!」
  と、ダイチを急かす。

ダイチ「(元気良く)合点!」
  と、駆け出す。

タイチ「(前のめりに倒れ)もしもし、おニイさぁ〜ん・・・忘れ物ぉ〜」

ダイチ「(戻って来て)全くもう・・・何してんの?」
  と、呆れながらも・・・タイチの手を掴み・・・連れて行く。

  程無くして、モモがやって来て・・・スロープを勢い良く駆け下りるタイチ達を発見する。

モモ「いた!!」

        ×      ×      ×

  小西家のヨットの前に立つタイチ・ダイチ・・・デッキには誰もいない。

タイチ「これで沖へ出ちまえば、お仕事第1段階完了だ!レッツ・・・」

ダイチ「(英語で)綱解き〜♪」
  と、張り切って・・・もやい綱を解きにかかる・・・様子を手摺越しから見ているモモ。
       
        ×      ×      ×

モモ「(驚いて)エ?!ウソ?!ヤダ?!逃げちゃう?!どうしよう・・・(と、迷うが)えーい、女は度胸!もう、やるっきゃない!!」

        ×      ×      ×

  必死にもやい綱を解こうとするダイチ・・・だが、中々解けなくて悪戦苦闘している。

タイチ「(焦れて)タコッ!何やってんだ?!早くしろ!じれったい」

ダイチ「(手を動かしながら)だって、コイツ・・・解けませんよ」

タイチ「(見兼ねて)どけ、オレがやる!(と、ダイチを押し退け)こんなモノはな、いつでも出航出来るよう簡単に解けるようになってるんだよ」
  と、やってみるが・・・出来なくて・・・「あれ?」となる。

ダイチ「(冷やかな目で)簡単に何でした・・・?」

タイチ「(ウッ)・・・」 



 すると、突然・・・



モモの声「オジサァ〜ン!!」
  が、タイチ達の耳に入って来る。

  船体の縁に「ゴンッ」と、額をぶつけるタイチ。
  
  小西家のヨットに駆け寄って来るモモ。

モモ「お願いです!腰に巻いているセーター、返して下さい」

ダイチ「(モモの前に立ちはだかり)オウオウ、何だテメーは?とっとと帰れ!」

モモ「そのセーター、アタシのなんです!お願いします!」
  と、必死になって頼む。

ダイチ「聞こえなかったのか?さっさとオレ達の前から消えろ!って言ったんだよ!」

モモ「退いて下さい。アタシ、あなたじゃなくてこのオジサンに話してるんです。邪魔しないで下さい!」

ダイチ「その言葉、そっくり返してやるよ。オジサンのお仕事の邪魔するんじゃねぇよ。ガキンチョ!」

モモ「ガキンチョ?!?(怒って)ちょっと、ガキンチョって誰のことよ!?!」



 この言葉を皮切りに、モモとダイチの終わりなきバトルは始まった・・・・・・。




  激しく言い争うモモ・ダイチ・・・発する言葉の端端に『オジサン、オジサン・・・』と、無意識に連発する・・・のを背中で聞いているタイチ。



 『オジサン』という見えない(言葉の)矢が、タイチの胸にグサグサ突き刺さる。そんなことを知ってか知らずか、後ろの二人が繰り広げる口論は益益ヒートアップする・・・・・・。



  心の痛みに耐えながら黙々と作業するタイチ。

タイチ「(ぶつぶつと)誰がオジサンじゃ・・・誰がオジサンじゃ・・・」

リカの声「(タイチに)あの〜・・・」

タイチ「(キレて)喧しい!誰がオジ・・・」
  と、ヨットの方を見る・・・と、(何時の間にか)リカがデッキに出ていたので「!?」となる。




 そのまま、二人は3秒間、見つめ合う・・・・・・。



タイチ「やべぇ・・・」

リカ「(危機を感じ)やばい・・・」
   
  ヨットに乗り込むタイチ・・・から逃げるリカ。

モモ「(ダイチを押し退け)返して!」
  と、続けて・・・乗り込む。

  キャビン内に逃げ込もうとするリカ・・・だが、入口の手前で・・・タイチに捕まってしまい・・・必死にもがき、抵抗する。

ダイチ「兄貴?!」

タイチ「捕獲成功!ダイチ、この綱を切れ!早くしろ!!」

ダイチ「合点!」
  と、ヨットに飛び乗り・・・万能バサミ(蛇腹式マジックハンドに似た形で、先端部分がハサミになっている)で、もやい綱を切る。

  少しずつ動き出すヨット。

リカ「(ポツリと)最初からそうすれば良かったのでは?」

タイチ・ダイチ「アッ・・・」
  と、気が付く。

モモ「(ハッ)じゃなくて、何するのよ?!早く戻して!」

ダイチ「ウルセエ!静かにしろ!」
  と、ハサミの刃先・・・を、モモの顔の前に向ける。

  青ざめて、言葉を失うモモ。
















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