完結小説図書館
作者: アルセ (総ページ数: 109ページ)
関連タグ:
10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~ 80~ 90~ 100~
*25*
○現在・ヨットハーバー
タイチ「いいから、チャンス到来だってこと。一気に片を付けるぞ。急げ!」
と、ダイチを急かす。
ダイチ「(元気良く)合点!」
と、駆け出す。
タイチ「(前のめりに倒れ)もしもし、おニイさぁ〜ん・・・忘れ物ぉ〜」
ダイチ「(戻って来て)全くもう・・・何してんの?」
と、呆れながらも・・・タイチの手を掴み・・・連れて行く。
程無くして、モモがやって来て・・・スロープを勢い良く駆け下りるタイチ達を発見する。
モモ「いた!!」
× × ×
小西家のヨットの前に立つタイチ・ダイチ・・・デッキには誰もいない。
タイチ「これで沖へ出ちまえば、お仕事第1段階完了だ!レッツ・・・」
ダイチ「(英語で)綱解き〜♪」
と、張り切って・・・もやい綱を解きにかかる・・・様子を手摺越しから見ているモモ。
× × ×
モモ「(驚いて)エ?!ウソ?!ヤダ?!逃げちゃう?!どうしよう・・・(と、迷うが)えーい、女は度胸!もう、やるっきゃない!!」
× × ×
必死にもやい綱を解こうとするダイチ・・・だが、中々解けなくて悪戦苦闘している。
タイチ「(焦れて)タコッ!何やってんだ?!早くしろ!じれったい」
ダイチ「(手を動かしながら)だって、コイツ・・・解けませんよ」
タイチ「(見兼ねて)どけ、オレがやる!(と、ダイチを押し退け)こんなモノはな、いつでも出航出来るよう簡単に解けるようになってるんだよ」
と、やってみるが・・・出来なくて・・・「あれ?」となる。
ダイチ「(冷やかな目で)簡単に何でした・・・?」
タイチ「(ウッ)・・・」
すると、突然・・・
モモの声「オジサァ〜ン!!」
が、タイチ達の耳に入って来る。
船体の縁に「ゴンッ」と、額をぶつけるタイチ。
小西家のヨットに駆け寄って来るモモ。
モモ「お願いです!腰に巻いているセーター、返して下さい」
ダイチ「(モモの前に立ちはだかり)オウオウ、何だテメーは?とっとと帰れ!」
モモ「そのセーター、アタシのなんです!お願いします!」
と、必死になって頼む。
ダイチ「聞こえなかったのか?さっさとオレ達の前から消えろ!って言ったんだよ!」
モモ「退いて下さい。アタシ、あなたじゃなくてこのオジサンに話してるんです。邪魔しないで下さい!」
ダイチ「その言葉、そっくり返してやるよ。オジサンのお仕事の邪魔するんじゃねぇよ。ガキンチョ!」
モモ「ガキンチョ?!?(怒って)ちょっと、ガキンチョって誰のことよ!?!」
この言葉を皮切りに、モモとダイチの終わりなきバトルは始まった・・・・・・。
激しく言い争うモモ・ダイチ・・・発する言葉の端端に『オジサン、オジサン・・・』と、無意識に連発する・・・のを背中で聞いているタイチ。
『オジサン』という見えない(言葉の)矢が、タイチの胸にグサグサ突き刺さる。そんなことを知ってか知らずか、後ろの二人が繰り広げる口論は益益ヒートアップする・・・・・・。
心の痛みに耐えながら黙々と作業するタイチ。
タイチ「(ぶつぶつと)誰がオジサンじゃ・・・誰がオジサンじゃ・・・」
リカの声「(タイチに)あの〜・・・」
タイチ「(キレて)喧しい!誰がオジ・・・」
と、ヨットの方を見る・・・と、(何時の間にか)リカがデッキに出ていたので「!?」となる。
そのまま、二人は3秒間、見つめ合う・・・・・・。
タイチ「やべぇ・・・」
リカ「(危機を感じ)やばい・・・」
ヨットに乗り込むタイチ・・・から逃げるリカ。
モモ「(ダイチを押し退け)返して!」
と、続けて・・・乗り込む。
キャビン内に逃げ込もうとするリカ・・・だが、入口の手前で・・・タイチに捕まってしまい・・・必死にもがき、抵抗する。
ダイチ「兄貴?!」
タイチ「捕獲成功!ダイチ、この綱を切れ!早くしろ!!」
ダイチ「合点!」
と、ヨットに飛び乗り・・・万能バサミ(蛇腹式マジックハンドに似た形で、先端部分がハサミになっている)で、もやい綱を切る。
少しずつ動き出すヨット。
リカ「(ポツリと)最初からそうすれば良かったのでは?」
タイチ・ダイチ「アッ・・・」
と、気が付く。
モモ「(ハッ)じゃなくて、何するのよ?!早く戻して!」
ダイチ「ウルセエ!静かにしろ!」
と、ハサミの刃先・・・を、モモの顔の前に向ける。
青ざめて、言葉を失うモモ。